離婚で年金分割をしないとどうなるのか弁護士が解説
年金分割は、離婚をしたら自動的に行われるということはありません。 年金分割は、将来の年金の受給額に影響します。
特に婚姻期間が長期の場合で、専業主婦(主夫)といった場合は、年金分割を行わないと、年金分割を行った場合に比べて、将来の年金額が大きく減少してしまう可能性があります。 老後の生活に備えるためにも、年金分割の手続きを確実に行う必要があります。
離婚とお金についてこちらの記事も参考になさってください。
・将来の退職金は財産分与対象になる?
離婚で年金分割を行う期限、対象、種類、手続きについて
期限について
手続きの期限は離婚後2年以内となります。期間が過ぎてしまうと手続きができませんので、注意が必要です。通常2年以内ですが、元配偶者が死亡すると、死亡から1カ月以内に手続きを行う必要が生じます。従って、2年の期間があると思わずに、離婚後には速やかに手続きを行うことが望まれます。
対象について
年金分割の対象となるのは、厚生年金と以前の共済年金(共済年金は厚生年金に一元化されています。)のみとなります。国民年金のみの加入の場合は、年金分割を行うことはできません。
例えば、相手方が自営業者で、厚生年金や共済年金が無く、国民年金にしか加入していない場合は、年金分割を行うことはできません。また、確定拠出年金等についても、年金分割の対象とはならず、財産分与において解決する問題ということになります。
種類について
年金分割の種類としては、夫婦間で合意を行う手続きが必要となる合意分割と、合意が必要とならない3号分割があります。
3号分割のみの場合は、配偶者の合意が必要とならず単独で手続きを行うことが可能です。3号分割のみの場合は、婚姻(事実婚を含みます。)の開始が、平成20年4月1日以降であり、厚生年金・共済年金加入期間の全期間について、3号被保険者である場合です。
3号被保険者というのは、厚生年金加入者に扶養されている年収130万円未満の配偶者で、自身で国民年金保険料を納めなくても、国民年金加入者になっている方です。
これ以外の場合は、合意分割が必要となります。
手続きについて
(1)3号分割のみの場合
離婚後に必要書類を揃えて年金事務所等に行き、手続きを行うだけです。相手方の了解は必要ありません。分割の割合としては、0.5(2分の1)となります。
(2)合意分割について
最も多いと考えられる年金事務所での手続きを解説します。
①情報通知書の取得
まず、年金事務所において、年金分割のための情報通知書を取得する必要があります。申請をしてから取得するまでに多少時間がかかります。予約の要否等、取得の手続きについては年金事務所にご確認下さい。
②割合の合意
年金分割の按分割合の合意をする必要があります。通常は0.5となります。特に裁判所においては、0.5以外の主張を行っても、0.5以外となることはなかなか難しいのが実情です。
もっとも離婚の条件の交渉材料として、年金分割の請求を行わないということ等を定めることはあり得ます。また、年金分割以外の離婚条件が整っている場合は、年金分割を除いて合意し、年金分割については、離婚成立後に、裁判所の審判にて解決するという方法もあります。
③合意の方法
実際に年金事務所に申請を受け付けてもらう必要がありますが、年金事務所が受け付けてくれる合意の方法は限定されています。
ⅰ 裁判所作成の書類(調停調書、審判書、判決、和解調書)
ⅱ 公証人役場で作成する公正証書
ⅲ 公証人役場での私署証書認証
ⅳ 離婚成立後に夫婦2人で年金事務所で手続き
離婚成立後に夫婦2人で年金事務所に行く手続きは、コストの面では大変に良い手続きですが、相手方の協力を得られなければ、結局裁判所の手続きを行うしかなくなるというデメリットがあります。
離婚するまでは、連絡が取れていたのに、離婚が成立したら急に連絡が取れなくなるというケースはあります。
年金事務所に一緒に行くことを約束していても、それを強制することは残念ながらできません。
そのため、手続きについては、相手方の関係性によって正しく選択する必要があります。
他の手続きは、年金事務所での手続き自体は、相手方の協力が無くても行うことが可能です。離婚後に相手方が翻意したとしても、手続きが可能という点がメリットとなります。
協議離婚を行う際には、養育費等、年金分割に限らず、公正証書にしておいた方が良いケースが多いと思われますので、離婚の公正証書を作成する際に、年金分割についての公正証書も作成すれば、それ程手間も必要ではありません。
裁判所での手続きの場合は、情報通知書を裁判所に提出する必要があります。裁判所からも、年金分割についてはどうするか尋ねられることが多いかと思います。
上記の通り、裁判所では按分割合については0.5と定めることが大半ですので、相手方が応じない場合は、裁判所の手続きを利用することをお勧めします。
離婚協議書の作り方としてこちらにサンプルを記載しております。
年金分割を含めて、離婚においては決めなくてはならないことが多いので、手続きとして、
どの手続きを利用した方が良いのかは、ケースによって異なりますので、弁護士とご相談下さい。
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