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弁護士コラム Column

就業規則「解雇事由」の記載例を社労士が解説

2025年03月28日
名古屋丸の内本部事務所  社労士 大内 直子

就業規則に規定できる解雇とは

就業規則では解雇に関する事項は絶対的必要記載事項であり必ず記載が必要です。

​​解雇には大きく普通解雇、懲戒解雇、整理解雇があり、就業規則にはそれぞれの解雇に該当するのはどのような場合かを規定します。

法律上解雇が禁止されている事由

解雇には法律上禁止されているものがあります。
​具体的には以下の例が挙げられます。

  1.   ​・労災による疾病や療養のために休業する期間及びその後30日間の解雇
  2.   ​・女性従業員の婚姻、妊娠、出産、産前産後休業等を理由とする解雇
  3.   ​・従業員の国籍、信条又は社会的身分等を理由とする解雇
  4.   ​・従業員が育児休業、介護休業等を取得したことを理由とする解雇
  5. ​  ・従業員が会社の各種法令違反を社内外に告発したことを理由とする解雇 

解雇・退職・辞職の違い

従業員が職場を辞める理由は解雇・退職・辞職のいずれかであると思います。​それぞれどのような意味合いをもつか解説します。

解雇とは
従業員が起こした問題行為を理由として会社側が一方的に労働契約を打ち切る処分のことをいいます。

退職とは
従業員が自らの申出によって労働契約を終了させることをいいます。

​辞職とは
​退職と混同されてしまいがちですが、自らの意思で会社を辞めるという意味においては同じであるものの、一般の従業員ではなく主に役員が会社を辞める際に用いられます。

​​ ここからは解雇の内容について詳しく解説します。

普通解雇とは

普通解雇とは懲戒解雇や整理解雇以外の解雇のことで、いわゆる従業員の職務怠慢や能力不足、病気やケガによる就業不能などを理由とする解雇のことを指します。

​​ 就業規則には普通解雇に該当する事由を明記します。しかし就業規則に定める解雇事由に該当したとしても、必ずしも解雇が認められるとは限りません。

​​行われた解雇が有効か否かを判断するには、解雇に至る経緯や状況など様々な点を確認し、その解雇に客観的に合理的な理由があるか、社会通念に照らしても相当な判断(必要性)であったかどうかが問われます。(労契法第16条)

解雇までの流れや理由

普通解雇を行う際は以下のような流れで行います。​

① 解雇に至る経緯の確認(本人からの聴取含む)​

今回の解雇をどのように進めてゆくか、ある程度の方針を固めた上で、対象従業員および関係者から事情聴取します。

② 解雇事由(理由)の検討

上記①を踏まえ、従業員の行為が就業規則に定める解雇事由相当かを検討します。

​​ この時、例えば勤怠不良や本人の能力の欠如が問題とされている場合は、その事実のみならず、これまでの指導歴や今後もその状況が継続する可能性があるかどうか本人の情状および同様のケースにおける他の従業員に対する処分との均衡など、様々な事情を総合的かつ冷静に判断することが必要です。

③ 対象者へ解雇予告

検討の結果、解雇相当と判断した場合は、就業規則に定める解雇の手続きに沿って対応を進めます。

​​多くの会社が法令に従い「30日前の解雇予告もしくは解雇予告手当の支払を行う」と定めていると思います。 解雇予告は口頭でも有効ですが、トラブル防止のために書面を作成し本人へ渡すのが安心です。

​​ なお書面に記載する解雇理由は就業規則の記載内容と紐づくような記載を行いましょう。

普通解雇について記載例

​ 解雇予告年月日:令和〇年〇月〇日
​解雇年月日  :令和〇年〇月〇日
​ 解雇事由   :・・・・・・・・・・・・・・・・
​ 解雇理由   :就業規則第〇条に定める「勤務成績や能力が著しく不良で、 業務に適さないと認めたとき」に該当するため。

病気による解雇・休職期間中の解雇について

多くの会社では私傷病により休職し、休職期間満了日までに復職できない場合は「休職期間満了日をもって自然退職」もしくは「休職期間満了日をもって解雇」などと就業規則に定められているのではないでしょうか(自然退職の場合、実務上は自己都合退職として処理されるのが一般的)。

対象の従業員がでた場合は、自社の就業規則がどのような定めをしているか、あるいは何も定めていないかを確認の上、規則に沿った対応を行いましょう。

​​なお会社は休職期間満了まで、定期的に従業員のけがや病気の状況を把握するよう努め、本格的な復帰の前には「リハビリ出勤」を試みるなど、従業員の不安解消や復帰しやすい環境作りを行うことも従業員の早期復帰に効果的です。

ただ就業規則に定めがあり、規則通りの対応をしていても、当該退職や解雇について後に従業員から「不当な取り扱いだ」として、裁判等の大きな問題にまで発展する場合もあります。

​​この様なリスクを回避するためにも、就業規則に定めた休職手順や休職期間は適切か(例えば、休職期間が不当に短すぎることはないか、復帰の判断は適切であったか、休職満了時に従前業務はできないものの、他の業務は行えるということはないか、障害の特性に配慮したか等)適宜見直しを行いましょう。

懲戒解雇とは

懲戒解雇は懲戒処分の中で最も重たい処分であり、会社の秩序を大きく乱す違反や自身の重大な非行に対する“制裁”として行われる解雇の一つです。

会社規定にもよりますが、懲戒処分は退職金等が支払われないケースが多く、支払われたとしても大きく減額されるなど従業員にとって大変厳しい処分と考えられます。

先に記載の通り、解雇が有効と認められるためには客観的合理性と社会通念上の相当性が必要ですが、懲戒解雇の場合も同様です(労契法第15条・16条)。

​​懲戒解雇が有効となるために具体的には以下のイ~二の要件を満たす必要があることから、懲戒解雇を行うには就業規則への懲戒事由の規定は必須であると言えます。

イ) 懲戒事由や懲戒の種類が明記された就業規則があり、周知されていること
​ロ) 就業規則に定めた規定が合理的な内容であること
​ ハ) 処分されるべき行為が就業規則に定める懲戒事由に該当すること
​ ニ) その他の要件

主な懲戒解雇事由と記載例

懲戒解雇と認められる主な事由には以下が挙げられます。

  1.   ​・重大な業務命令違反
  2.   ​・業務上横領
  3.   ​・業務上知り得た機密事項の漏洩
  4.   ​・他の従業員に対する暴行
  5.   ​・強迫
  6.   ​・名誉毀損
  7.   ​・会社の名誉や信用を著しく毀損し、会社に損害を与えたとき
  8.   ​・長期間にわたる無断欠席

など 上記を就業規則に明記する場合の規定例は以下の通りです。懲戒処分の種類(懲戒解雇であること)、合理的な懲戒事由を明記しましょう。

【規定例】
​第〇条(懲戒解雇事由) 従業員が次のいずれか一つに該当する場合は、懲戒解雇に処する。ただし情状によっては、諭旨解雇、減給および降格にとどめることがある。

​① 正当な理由なく、しばしば業務上の指示・命令等に従わないとき
​ ② 他の従業員の就業環境を著しく害するようなハラスメント行為・強迫・名誉棄損を行ったとき
​③ 業務上知り得た会社の重要な情報を漏洩し、会社に損害を与えたとき
​④ 正当な理由なく無断欠勤が〇日以上に及び、出勤に応じないとき            
​:
​⑩ その他全各号に準ずる行為が認められたとき

懲戒解雇事由と諭旨解雇の違い

諭旨解雇は従業員が懲戒解雇に相当する違反をした場合に、会社が従業員に退職を勧告し、退職届の提出を促した上で解雇するもので、懲戒解雇に次ぐ重たい懲戒処分です。

​​ 懲戒解雇に相当するような事案であっても、従業員に情状酌量の余地がある場合や本人が深く反省している場合には諭旨解雇となる傾向がみられます。

​​ また退職金の支給がほとんどされない懲戒解雇と違い、諭旨解雇の場合は退職金が支給されることが多い印象です。(個々の会社の就業規則により異なります。)

整理解雇とは

整理解雇は会社が人員削減を目的として行う解雇で、主に経営不振や業績悪化が原因とされます。整理解雇も解雇の一つですが従業員に落ち度はなく、会社側の事情による解雇であるという点で、普通解雇や懲戒解雇と異なります。

​​昨今、新型コロナウイルスの影響により整理解雇を迫られる会社も多くあると思います。​​しかしたとえ経営不振が理由であったとしても、会社は従業員を簡単に解雇できるわけではなく、他の解雇同様その整理解雇の客観的合理性や社会通念上の相当性が問われます。

​​ なお整理解雇が有効となるために具体的には以下イ~二の要件を満たすことが必要です。

​​就業規則への規定は必須でないものの、例えば解雇回避のために他社への出向や転籍を行う場合には、その根拠が就業規則に定められているのが望ましいでしょう。

イ) 人員削除の必要性があること
​ロ) 解雇を回避努力や経費削減等を講じたこと
​ ハ) 解雇対象者の選定に合理性があること
​ニ) 解雇対象者や労働組合に十分な説明を行い、誠実に協議を行ったこと

整理解雇事由の記載例

整理解雇について就業規則に定める場合は(普通)解雇事由の条項に以下のような文言を記載しておくのがよいでしょう。

【規定例】
​・会社はやむを得ない事業上の都合により従業員を解雇することがある
​ ・会社は事業の縮小などにより、人員の整理による解雇を行う場合がある  
​など

​​ 第〇条(出向)  
​会社は、業務上の必要性がある場合、関係会社や他社への出向を命ずる場合がある。なお従業員は正当な理由がない限りこの命令を拒むことはできない。

解雇予告とは

従業員を解雇する際は、法律上対象者に事前予告しなければなりません。この予告は解雇の少なくとも30日前までに行う必要があります。(労基法第20条、第119条)

​​なお解雇日までに30日以上の日数がない場合は、解雇予告をした上で30日に不足する分の解雇予告手当を支払わなければならず、また即日解雇を行いたい場合は30日分の解雇予告手当を支払う必要があります。

​​解雇予告は取扱いが複雑なため、これら法律のルールを就業規則に明記している会社が多い印象です。

解雇予告手当の計算方法

解雇予告手当の額は平均賃金に30日分、
​もしくは予告期間が30日に満たない場合はその日数分を乗じた額となります。

​​なお平均賃金とは「算定すべき事由の発生日(解雇日)以前3ヵ月に対象者に支払われた賃金の総額」を「その期間の総日数(暦日数)」で除した金額をいいます。

​​臨時に支払われる賃金や3ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)は含まれません。

また賃金締切日がある場合は、その起算日は直前の賃金締切日を用いること、賃金が時間額や日額、出来高払の場合は、最低保障額があることなど、その他にも細かいルールがあります。

​​計算を行う際は事前に専門家である社労士に相談するのがお勧めです。

就業規則がない場合の解雇はどうなる?

就業規則を作成していなければ「懲戒解雇」を行うことができません。 懲戒解雇を行うには就業規則に予め具体的な懲戒解雇事由を定めた上で、その就業規則の周知が必要と考えられているからです。

​​ 懲戒解雇をはじめとする懲戒処分は、社内の規律維持にとても重要な役割を担います。従業員の問題行為に処分を下せなければ社内秩序が乱れ、従業員間のトラブルが増加する、会社が従業員を制御することが難しくなるなど、様々な問題が発生するリスクがあります。

​​ 一方、就業規則に記載があれば従業員の非違行為への抑止力になり、実際に懲戒解雇を行う場面では、明確な懲戒解雇の根拠を示すことが可能になる等の効果が期待できます。

​​もっとも懲戒解雇事由は労働基準法に定める就業規則の絶対的必要記載事項の一つですので、必ずその根拠事由の記載が必要です。

就業規則作成を社労士に依頼するメリット

解雇を行うには就業規則への解雇事由の記載が不可欠です。​​しかしいつ起こるとも知れない解雇に備え予め就業規則を整備することは容易ではありません。

​​そこで就業規則の作成にお悩みの際は、社会保険労務士へご相談頂くのがお勧めです。

また​​ 愛知総合法律事務所には社会保険労務士だけでなく、弁護士、司法書士、税理士も在籍しており、解雇のみならず今後発生が見込まれるトラブルを想定した上でのご提案が可能です。まずはお気軽にご相談ください。

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この記事の著者

大内 直子

社労士

大内 直子(おおうち なおこ)プロフィール詳細はこちら

名古屋丸の内本部事務所

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