就業規則の意見書とは?記入例と流れを解説

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就業規則の意見書とは?記入例と流れを解説

2024年10月08日
名古屋丸の内本部事務所  社労士 大内 直子

就業規則と意見書とは?

常時10人以上の労働者を使用する事業場は、就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出る義務があります。その際、必要になるのが「意見書」です。 意見書とは、労働者代表から就業規則の作成や変更についての意見を聴き、その内容を書き記したもので、作成した意見には労働者代表の記名が必要です。

意見書が必要な理由

就業規則の作成・変更時には、労働者にも就業規則に関わる機会を与えるため、意見書の提出が求められます。これは労働者が自分たちの労働条件に関心を持ち、内容を確認・評価する事で、公正で透明性の高い就業規則にすることを目的としています。

 また労使双方の視点を取り入れた就業規則であれば、結果として労働者の権利や利益がより適切に守られるようになり、労使間の争いを未然に防ぐことも可能になります。

意見書の作成手順

意見書の作成は以下の手順で行います。

① 労働者代表の選出(後述)
② 就業規則の作成・変更内容に対する代表者からの意見聴取
③ 前項の意見を記した書面を作成(=意見書の作成)

※労働者側が何らかの理由によって意見書の記載を拒んだ場合は、意見を聴いたことが客観的に証明できるよう整えた書類と共に就業規則を提出しましょう。

当事務所では就業規則作成に関するご相談を無料で承っております。全国対応しておりますのでお気軽にお問合せください。詳しくはこちら

意見書を作成する際の注意点

次に意見書を作成する際の注意点を説明します。

① それぞれの事業場ごとに意見聴取する

就業規則の作成・届出義務は「事業場」単位が原則であるため、意見書も事業場ごとに聴取し、作成する必要があります。​

​例外的に複数の事業場で同じ就業規則を適用し、本社で一括して届出を行うことも可能ですが、この場合でも意見書は事業場ごとに作成・届出を行う必要があります。

なお、事業場は原則場所的観念によって判断されます。例えば大きな会社の場合、東京支店・名古屋支店・大阪支店など、異なる場所にある場合は支店ごとに取得が必要です。

ただし、同じ場所にあっても、労働の様態が大きく異なるような場合は、それぞれを個々の事業場として取り扱うこともあるなど、事業場特定には注意が必要です。工場の中にある診療所や自動車などを販売する会社に併設されている整備工場などがこれに該当します。

判断に迷う場合は、会社の実態を行政に説明した上で、どちらが事業場に該当するかをしっかりと確認した上で意見書聴取を進めましょう。

② 労働者に賛成を強要してはならない

意見書の目的は「意見を聴くこと」であって、賛成や同意を得ることではありません。

そのため、取得した意見書の内容が否定的であったとしても、就業規則の効力発生要件を有する限り、その否定的な内容の意見書を添付して労働基準監督署に届出を行うことができます。

従って、労働者から反対意見を退けるなど、意見の内容を強要するようなことを行ってはなりません。

③ 労働者代表を選出する際は民主的に行うこと

公平・公正な意見聴取のために、労働者代表は投票や挙手、話し合いなどの場を設けて民主的な方法で選出しましょう。

意見書の具体的な記入例

意見書の記載例は次の通りです。​

異議があった場合

・第〇章 第〇条に「労働者の定年は満65歳とし、満65歳に達する月の末日にて退職となる」との記載があるが、満70歳までの就業機会の確保は努力義務とされているので、定年は満70歳とすることを再検討して頂きたい。

・第〇章 第〇条に記載の有給休暇制度について、時間の有効活用ができるように時間単位 での取得ができるように再検討して頂きたい。

異議がなかった場合

・就業規則案に意義なし
・特に意見なし
・特になし

意見がなかった場合でも必ず意見書の添付は必要となりますので、忘れずに提出しましょう。

テンプレート活用方法

意見書のフォーマットは特に指定のものはありません。会社で独自に作成しても、労働局等のHPで提供されているものを活用しても、いずれも問題ありません。
特にこだわりがなければ、労働局等行政から提供されているものを活用すると良いでしょう。

意見書に記載すべき事項

意見書には下記の事項を記載するようにしましょう。

① 意見書作成日
② 宛名 (就業先の会社名及び代表者名)
③ 意見聴取日
④ 意見の内容(就業規則の作成・変更内容に対しての意見)
⑤ 労働組合又は労働者代表役職及び氏名
⑥ 労働者代表を選出した方法(労働組合の場合は記載不要)

労働者代表とは

労働者が次のいずれの要件も満たす者であることが必要です。

具体的には
(1)労働基準法第41条第2号に規定する「監督又は管理の地位にある者でないこと」、
(2)就業規則の作成・変更の際に、使用者から意見を聴取される者等を選出することを明らかにして実施される投票、選挙等の方法による手続で選出された者で、使用者の意向によって選出された者ではないこと。


上記要件を満たす必要があります。(平11.1.29基発45号、平成22.5.18基発0518第1号)

労働者代表の選出方法

労働者代表は、労働者の過半数がその人の選出を支持していることが明確になる民主的な方法によって事業所ごとに選出する必要があります。主に以下の方法で選出します。

① 投票:候補者を募集し、労働者による投票を実施
② 挙手:労働者による挙手制
③ 話し合い:労働者同士による話し合い

また、選出された労働者代表に対し、使用者には以下2つの配慮義務があります。

(1)労働者代表であること等を理由とする不利益な取り扱いの禁止

使用者は、労働者が代表者であることや代表者になろうとしたこと、または代表者として正当な行為をしたことを理由として解雇、賃金の減額、降格等労働条件について当該労働者に対して不利益な取り扱いを行わないようにしなければなりません。(労基法施行規則第6条の2第3項)。

(2)労働者代表としての事務を円滑に行えるように配慮する義務

使用者は、労働者代表が事務を円滑に行えるよう、以下の点に配慮する義務があります。

  1. ・労働者の意見を集約するために必要となる事務機器 (イントラネットや社内メールなど) の提供
  2. ・事務を行うためのスペース等の確保・提供

労使間の意見聴取の重要性

ここまで記載の通り、労働者代表の選出や意見聴取は、就業規則の成立にとって大変重要です。そもそも、これらの行為を欠く就業規則は無効とされます。

また労働者が自社の就業規則を把握し、関心を持つことは、従業員としての意識を高め、責任感を持って仕事に取り組むことにも繋がります。また使用者が就業環境の改善等を求める従業員の意見に耳を傾けることで、従業員の会社に対する信頼度も高まり、企業全体の利益にもつながるのではないでしょうか。

意見聴取の進め方、その際の注意点

まずは就業規則の作成や変更について、労働者がきちんと理解できるよう説明し、その後に意見を聴取することが重要です。就業規則の変更内容等について十分な説明がないまま届出を行うと、後に無効とされるリスクもあるため、注意しましょう。

次に、労働者代表から意見書を取り付けた際、たとえ否定的な意見が出たとしても、法的に要求されているのは意見を聴くことであり、その意見を反映させることまでは必要とされていません。意見を取得すること自体が、法的な手続きとして必要であるという点を理解し、正しい手順で労働者から意見を聴取するようにしましょう。

意見聴取は形式的に「聴きさえすればよい」「聴くことにのみ意味がある」との誤解を与えてしまうかもしれません。しかし、聴取した意見は労働者との信頼関係を維持するためにも、無視せず真摯に受け止めることが重要です。

意見が出た場合は、会社は内容を精査し、できる限り尊重することが望ましいでしょう。

意見書の署名と押印の廃止について

コロナの影響で、テレワーク等が広がったことにより、行政手続においてもデジタル化や効率化が求められることとなりました。

その結果、以前は労働基準監督署に提出する就業規則の意見書には、労働者代表による押印や署名が必要でしたが、現在は廃止されています。

ただし意見書を作成したのはだれか?という点を明確にするため、「記名」は必要なりますのでご注意ください。 なお記名は署名と違い、自筆の必要はなく、パソコンやゴム印等で氏名を記したもので構いません。

就業規則変更を社労士に依頼するメリット

就業規則の作成や変更は企業にとって重要な作業です。労働基準法やその他の関連法規に適合しているかどうかなど、詳細までしっかり対応できているかを確認するのは容易ではありません。

そこで、これらに対応するためにも、就業規則の専門家である社会保険労務士に作成・変更の依頼をしてみてはいかがでしょうか。 社会保険労務士に依頼することで、法律に基づく適切な就業規則を作成できるだけでなく、法令違反のリスクを低減することもできます。

 その他にも、社会保険労務士に依頼することで次のようなメリットがあります。

・自社の働き方や就業状況に適したオーダーメイドの就業規則を作成することができる
・就業規則を作成する過程で、会社の現在の就業状況における問題点を把握できる (社会保険労務士と打合せを重ねていく中で、現在の労務管理が適切か否かを見直す良い機会になる。)

 なお、愛知総合法律事務所には社会保険労務士だけでなく、弁護士、司法書士、税理士も在籍しており、連携を取りながらお客様に最適なご提案を行う事が可能です。 まずはお気軽にご相談ください。

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この記事の著者

大内 直子

社労士

大内 直子(おおうち なおこ)プロフィール詳細はこちら

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