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就業規則のハラスメント(パワハラ・セクハラ)記載例を社労士が解説

2024年11月07日
名古屋丸の内本部事務所  社労士 小木曽 裕子

就業規則で書くハラスメントの定義とその種類

事業主に対し、職場におけるハラスメント対策が義務化されています。

​​ハラスメントには様々な種類があると言われていますが、事業主に対策が義務付けられているのは、セクシュアル・ハラスメント(平成11年)、妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント(平成29年)、そしてパワーハラスメント(令和2年、令和4年)となります。各ハラスメントの概要は下記のとおりです。

パワーハラスメント

職場において行われる、立場や優越的な関係を利用した嫌がらせや就業環境を悪化させる言動などをいい、身体的・精神的な攻撃以外にも、過大な要求や逆に仕事を与えない等の過小な要求などもパワハラに該当します。

セクシュアル・ハラスメント

職場において行われる、意に反する性的な言動により労働条件について不利益を受けたり、就業状況が害されること

マタニティハラスメント

職場において行われる妊娠・出産・育児休業等を理由とした上司・同僚からの言動により就業環境が害されること

義務化された対策の一つとして、ハラスメントの内容や対処方法について就業規則に規定することが求められています。

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職務上の言動とハラスメントの関係

上述の対策が義務化されたハラスメントを含め、今では様々なハラスメントがありますが、特にパワハラについては「指導のつもりが実はハラスメントに該当していた」というように、行為者の気が付かないままハラスメントをしているというケースが少なくありません。

相手よりも優越的な立場にある状況で、業務上不必要な言動による指導はパワハラとなる可能性がありますので注意してください。

パワハラが社内に蔓延すると、退職者が増加することや、生産性が低下する可能性がありますので、正しい指導方法に関する知識を得ることが大切です。

当事務所ではハラスメントについても考慮した就業規則作成に関するご相談を無料で承っております。全国対応しておりますのでお気軽にお問合せください。詳しくはこちら

従業員が遵守すべき服務規律

服務規律は従業員が勤務する上で遵守すべき事項を定めたものです。 上司の指示を守ることや社内の機密情報を漏らさないことなど、社内秩序の保持に必要な事項となり、これらは就業規則に規定することが一般的です。

​​ハラスメント行為の禁止についても社内秩序保持に必要な事項となりますので、服務規律事項の一つとして定めます。

就業規則へ詳細に定めておくことで、ハラスメント行為等の服務規律違反が発生しても対処がしやすくなります。

​​ネット上で、ハラスメント規定のテンプレートを入手することができ、これを活用する方法もありますが、そのまま盛り込んでしまうと自社の実態に沿わない内容となり、必要な対処を取れなくなる可能性がありますので、実態に合わせ修正を入れる必要があります。

服務規律は社内秩序の保持に重要な事項となります。  

​​特にハラスメント行為はどこの会社でも発生する可能性がありますので、行為者である従業員へ適切に対処し、まじめに頑張っている社員が退職することの無いよう、ハラスメントの未然防止や、万が一発生した場合の対処がしっかりと取れる服務規律を定めることが大切になります。

就業規則における懲戒処分の規定

使用者が従業員に対して懲戒処分を行うには、就業規則においてどのような行為が懲戒事由となり、どのような懲戒処分を受けるのか、その種別と程度を定め、周知する必要があります。

ハラスメント行為等の服務規律違反も懲戒事由となり得ますので、どのような行為をした場合に、どの程度の懲戒処分を与えるのか規定する必要があります。  

​​懲戒事由の一部例として、

①正当な理由なく欠勤、遅刻、早退を繰り返したとき
②勤務態度不良又は職務怠慢と認められたとき​

などがありますが、ほんの一部になりますので、なるべく細かく規定していきましょう。

主な懲戒処分の種別と内容

  1. ・戒告  :一般的に過失に対して口頭や書面にて注意すること
  2. ・けん責 :始末書を提出させて将来を戒めること
  3. ・減給  :本来支払われる賃金から一定額を差し引くこと
  4. ・出勤停止:日数を決めてその期間出勤停止させ、その間の賃金を支払わないこと
  5. ・降格  :役職や職能の等級を下げること
  6. ・諭旨解雇:反省が見られる従業員に退職届を提出するように勧告すること
  7. ・懲戒解雇:最も重い懲戒処分であり、会社が一方的に労働契約を解除すること

就業規則でパワハラ・セクハラに関する記載例

パワーハラスメントに関する規定は就業規則本体の条文に、「詳細は別途ハラスメントの防止規定により定める」等とし、本体に付属するものとしてハラスメント防止規定を作成することが一般的です。

​​記載例として、まずは目的およびハラスメントの定義を記載した上でそれに対応する具体的な禁止行為を規定します。

第1条(目的)   
​この規定は、就業規則第〇条に基づき、社内におけるハラスメントを防ぐために従業員が遵守すべき事項を定める。

第2条(パワーハラスメントの定義)   
​パワーハラスメントとは、地位や人間関係などの職場における優位性を背景に、業務上必要な範囲を超えて、精神的・肉体的に苦痛を与える、又は職場内における就業環境を悪化させる行為をいう。ただし、客観的にみて、業務上必要なものとして行われる適正な指導や業務指示はパワーハラスメントに該当しない。

2 ​セクシャルハラスメントとは、職場における性的な言動に対する他の従業員の対応等により当該従業員の労働条件などに関して不利益を与えること、又は当該従業員の就業環境を害することをいう。

第3条(禁止行為)   
​従業員は職場内において、下記の第2項から第〇項に掲げる行為を行ってはならない。

2 パワーハラスメント
​ ① 前条の規定に該当するような行為を禁じる
​ ② 従業員がハラスメントを受けているという事実を知りながら、これを黙認する上司や代表者の行為

3 セクシャルハラスメント
​ ① 前条第2項の規定に該当するような行為を禁じる
​ ② 従業員がハラスメントを受けているという事実を知りながら、これを黙認する上司や代表者の行為

細かく禁止行為規定したい場合は、具体的な例を記載していきましょう。

例: 
​① 暴行など身体的な攻撃を行うこと     
​② 名誉棄損や侮辱行為等、精神的な攻撃を行うこと     
​③ 性的なことに関する不必要な質問     
​④ 身体への不必要な接触や性的関係の強要

また後程説明致しますが、ハラスメントにおける適切な相談窓口についても規定する必要があります。

性的指向と性自認に関するハラスメント規制例(SOGIハラスメント)

SOGI(ソジ)ハラスメントとは主に性的指向や性自認に関連した嫌がらせや嘲笑、差別的な言動などを行うことをいいます。  

​​具体的にはレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー(略してLGBT)と呼ばれる人に対して上記のような行動のほか、本人の了承を得ずに、他人に暴露することなどがSOGIハラスメントに該当し、これらもパワハラやセクハラの一つとして2018年より厚生労働省で認定されています。  

​​これらに関する禁止事項がまだ就業規則に規定されていない場合は、トラブルが起きて対処が難しくなる前に新たに追記することをおすすめします。

職場のハラスメント対策のガイドライン

ガイドラインとは守るべきルールが細かく規定されている就業規則とは違い、その職場における指標や指針・方向性のことを指します。

ハラスメント対策の一つとして、事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発が義務化されています。
​具体的には、
​職場におけるハラスメントの内容​・ハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発することや、行為者について、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、労働者に周知・啓発することです。

難しい法律言葉で規定されている就業規則ではなかなか理解してもらえない可能性もありますので、何をしたらダメなのかをイラストなどを用いてガイドラインを作成し、従業員に配布するとハラスメントの防止により効果的と言えるでしょう。

適切な相談窓口とサポート体制

これまで説明したハラスメントにおける定義や禁止事項、懲戒事項を記載したら終わりではありません。会社はハラスメントにおける相談体制及び対処についても明確化することが義務付けられています。  

​​実際にハラスメントが起きた際の適切な対応の流れとしては以下になります。

① 相談窓口にて事実関係の確認
​ ② ハラスメント調査報告書の作成
​ ③ 相談者及び行為者に対する措置を検討
​ ④ 相談者及び行為者へのフォロー
​ ⑤ 再発防止策の確立

ここまで対応することがハラスメント対策として義務づけられていますので、規定が不十分な場合は就業規則を修正することをおすすめします。

​​また相談者や行為者等のプライバシーを保護する義務もありますので、相談窓口となる従業員へ守秘義務に関する指導が必要です。

​​ そして相談したことや告発したことを理由として解雇その他不利益な取り扱いはしてはいけませんのでご注意ください。

従業員へのハラスメント規定の周知方法

ハラスメント防止規定は就業規則の一部となりますので、必ず従業員に周知する必要があります。事業所の見やすいところに掲示を行うことや、データや書面を従業員に配布することが求められます。  

​​また、それだけでなく、従業員が日ごろから目にする社内報やパンフレットなどイラストや大きな文字を使ったイメージしやすいもので周知を行うとハラスメントの防止により効果的と言えます。

ハラスメントに対して事業主の法的義務と責任

事業主はこれまで説明した防止措置を講ずるだけでなく、以下の事項に努める責務があります。​

  •   ・ハラスメント問題に対する労働者の関心と理解を深めること
  •   ​・雇用する労働者が他の労働者に対する言動に必要な注意を払うように研修や講習などを実施し、配慮すること
  • ​・事業主自身がハラスメントの問題にしっかりと向き合い理解を深めて労働者への言動に注意すること。

従業員保護のための就業規則の見直しを社労士に依頼するメリット

就業規則の作成や変更は企業にとって重要な作業です。労働基準法やその他の関連法規に適合しているかどうかなど、詳細までしっかり対応できているかを確認するのは容易ではありません。

​​ また今回ご紹介したパワハラ防止の措置も、既にすべての事業主に対し義務化されていますので、まだしっかりとした規定を盛り込めていなかったり、現在規定する内容が薄いと感じた場合は、就業規則の専門家である社会保険労務士へ作成・変更の依頼をされてはいかがでしょうか。

​​ 社会保険労務士へ依頼することで、法律に基づく適切な就業規則を作成できるだけでなく、従業員トラブルのリスクを低減することもできます。  

​​その他にも、社会保険労務士へ依頼することで会社の現在の就業状況における問題点を把握できたり、自社の働き方に合わせたオーダーメイドの就業規則を作成することができます。  

​​なお、愛知総合法律事務所には社会保険労務士だけでなく、弁護士、司法書士、税理士も在籍しており、連携を取りながらお客様に最適なご提案を行う事が可能です。 まずはお気軽にご相談ください。

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この記事の著者

小木曽 裕子

社労士

小木曽 裕子(おぎそ ゆうこ)プロフィール詳細はこちら

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