就業規則の変更手順と届け出の書き方

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弁護士コラム Column

就業規則の変更手順と届け出の書き方

2024年09月18日
名古屋丸の内本部事務所  社労士 小木曽 裕子

就業規則変更の一般的な手順

就業規則変更の一般的な手順についてご説明いたします。

​​ ① 変更の目的を定める
​まずは、なぜ就業規則変更が必要なのか、その目的を明確にします。

​ ② 就業規則の変更点を決めて規定内容を考案する
​上記目的を達成するために変更すべき規程のピックアップおよび変更内容の検討を 行います。

③ 就業規則変更の不利益性の確認
​就業規則の内容が従業員にとって不利益に変更されていないか、確認を行います。

​ ④ 意見書の作成
​就業規則の規定変更を終えたら、労働者の過半数を代表する従業員(もしくは過半数 労働組合)に、就業規則変更案を提示のうえ、意見を聴取し意見書を作成する必要が あります。

​ ⑤ 就業規則変更届の作成
​就業規則を労働基準監督署へ提出する際は、就業規則変更届の提出も必要となります。最近は電子申請が増えておりますが、電子申請の場合には、電子上で届出書を作成することが多いものと思います。

​ ⑥ 労働基準監督署へ届出
​変更された就業規則に、意見書および就業規則変更届を添え、管轄の労働基準監督署へ提出します。電子申請ではなく、書面提出の場合には、就業規則、意見書、就業規則変更届をそれぞれ2部用意し、1部は監督署の受領印を受けたうえで、控えとして取っておきましょう。

⑦ 社内への周知
​変更した就業規則は社内全体に周知する義務がありますので、 従業員全員が観覧できる共通フォルダへのデータ保管や、各事業場へ書面を備え付ける等の対応が必要となります。

当事務所では就業規則作成に関するご相談を無料で承っております。全国対応しておりますのでお気軽にお問合せください。詳しくはこちら

就業規則の変更・見直すタイミング

就業規則を見直すタイミングとしては主に以下のようなケースが挙げられます。

  1.   ​・労働基準法など労務関連の法律が改正されたとき(育児休業や介護休業法など)
  2.   ​・社内の働き方や賃金体系、手当等に変更があったとき
  3.   ​・労働基準監督署から是正勧告等があったとき  

​​その他、会社を立ち上げて以来就業規則の見直しを全くしていないとき現在の働き方の実態が就業規則の内容と合っていないときなどが挙げられます。

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次に、上記目的を達成するために、どの規定を変更する必要があるのかをピックアップします。​関連規程がある場合は、就業規則本体の規定を引用していることもありますので、関連規程の確認も必要となります。

​​変更必要箇所のピックアップが終了したら、どのような内容に変更するかを検討します。

​​パートやアルバイトなど正者員以外を雇用している場合は、その変更箇所が正社員以外にも適用されるのかを考慮しながら、変更目的を達成する規定内容を検討していきます。

​​そして、就業規則の変更に不利益性が無いかを確認します。

​​就業規則が従業員にとって不利益に変更される場合は、労働契約法第10条により変更の合理性が求められます。

​​この変更の合理性判断においては、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情を考慮されることになります、。

​​そのため不利益性が認められる場合には、これらの状況を確認し、変更手続きを進める必要があります。

まとめると以下のような順番になりますので、適正な手順で準備を進めていきましょう。

① 変更の目的を明確にする
​ ② 変更による影響や対処方法を検討し、変更実施の可否を判断
​③ 変更する規定をピックアップし、変更内容を検討
​④ 変更内容に不利益な内容がないかを確認

就業規則変更で必要な書類

就業規則変更の際には、添付書類として、意見書就業規則変更届を準備する必要があります。​それらの書類がそろってはじめて監督署に提出することができます。

意見書とは

就業規則に添付が必要な意見書とは、作成・変更した就業規則の内容に対して労働者の代表(もしくは過半数労働組合)から意見を聴取し、書き記した書類のことを指します。

​​意見書は就業規則を提出する上で必須の添付書類ですので、作成したら就業規則と一緒に提出しましょう。意見を聴取しなかった場合は罰則規定もありますので注意してください(労基法120条1号:30万円以下の罰金)。

​​また労働者からの意見が特にない場合でも意見書の作成は必要となりますので、その場合は「意見なし」と記載して提出してください。

従業員への意見聴取について

上記でも記載した通り、就業規則を作成・変更するにあたって、労働者への意見聴取は義務となっています。 

​​また聴取を行う対象となるのは「労働者の過半数を組織する労働組合」もしくはそのような労働組合がない場合は「労働者の過半数を代表する者」から聴取を行います。

​​「過半数を代表する者」とは管理監督者以外から民主的な方法(挙手や話し合い等)によって選ばれた、事業所で勤務する労働者の代表を指します。  

​​聴取した結果は必ず意見書にまとめる必要がありますが、仮にその意見が反対であったとしても、就業規則の効力に影響が及ぶことはありません。

​​賛成意見でも反対意見でも、労働者代表の署名または記名押印がある意見書が添付されていれば、就業規則の届け出は受理されます。

労働組合との協議と合意の取得について

労働組合が存在する企業が就業規則を作成・変更する場合は、その作成内容や変更内容を説明し、労働協約との内容に差異や矛盾がないか、下回るような条件でないことを確認する必要があります。

​また​​労働協約は就業規則よりも法的拘束力が強いため、もし同意が得られない部分があるようでしたら労働協約から見直す必要があります。

​​ 就業規則を作成する際は前もって労働協約の内容との整合性を確認しておくことが大事です。

就業規則変更届の書き方

就業規則変更届とは、就業規則を変更する際に管轄の労働基準監督署長に提出しなければならない届出のことを指します。

​​記載する主な内容は以下になります。​

  1. ​・就業規則の変更事項
  2. ​・事業所名と所在地
  3. ​・代表者氏名
  4. ​・業種と労働者数

​​フォーマットは特に定められておりませんので、各地の監督署や厚生労働省のHPで配布されているひな形を活用し、上記の内容をワード等にまとめましょう。

厚生労働省の主要様式ダウンロードコーナー

労働基準監督署へいつまでに提出するのか

就業規則の提出期限は特に法令等で明確な期限は定められていませんが、「遅延なく届け出ること」(労働基準法施行規則第49条1項)とされています。

​​就業規則を作成又は変更した場合は就業規則の施行日までに速やかに届出を行いましょう。

就業規則変更後の従業員への周知方法(社内掲示や書面での周知)

就業規則は届出を行ったら効力が生まれるわけではありません。届出後、従業員へ作成・変更した内容を周知して初めて就業規則の効力が生まれます。

​​ 周知の方法として以下が挙げられます。

​ ①書面にて従業員へ交付する
​ ②常時各事業所の見やすい場所に掲示を行う
​ ③パソコン内の共通フォルダ等へ保存する

​​ 書面での周知の場合、紛失や社外流出の恐れがありますので、​​③の周知方法で行うことがおすすめです。

従業員説明会の実施

説明会の実施等により、変更内容を説明する義務はありませんが、従業員が変更内容を把握・理解できていないと、ルール変更の実現が難しくなります。

​​会社として実現させたいルール変更の場合は特に、社内で従業員説明会等を開催し理解してもらうことが重要となります。

​​上述のとおり説明会等の実施は義務ではありませんが、従業員の不利益に就業規則が変更される場合は、従業員に対する説明の程度も合理性の判断要素となりますので、説明会の実施等、丁寧な説明が重要です。

就業規則を勝手に変えるとどうなる?

労働者代表の意見聴取や、労働基準監督署への届出が行われていなくても、就業規則が周知されていれば、その効力は及ぶものと考えられています。

​​そのため、従業員に内緒で会社が勝手に就業規則を修正しても、周知さえ行われていれば、その就業規則に拘束される可能性が高いです。

​​ただし、不利益な変更の場合には、変更の合理性が求められるため、従業員に内緒で変更した場合には、その効力は及ばないと判断される可能性が高いものと考えます。

就業規則変更による法的リスクと従業員が変更に同意しない場合

就業規則の変更には、原則として、従業員の同意は必要なく意見さえ聴取すれば問題ありません。

​​同意しなかった従業員も含めて就業規則は適用されます。  

​​しかし不利益となる変更内容の場合は、上述のとおり変更に合理性を持たせるか、個々の従業員の同意を得ることが必要となります。

​​変更の合理性や同意なしに変更した場合は、原則無効となる上に、従業員との信頼関係を損ねる可能性があり、場合によっては労働紛争にも繋がりかねません。

​​今後の会社経営にも関わることですので、適正な手順で変更を行いましょう

就業規則作成について社労士に依頼するメリット

弊所の社会保険労務士は、弁護士と協働し労働事件へも携わっておりますので、そのようなトラブルへ発展しないように考慮しながら、就業規則の作成を進めることが可能です。

​​ また弊所は社会保険労務士だけでなく、弁護士、司法書士、税理士も在籍しておりますので随時連携を取りながらお客様に最適なご提案をさせて頂きます。  

​​作成依頼だけでなく労働問題やそれ以外でも何かお困りのことがあればワンストップで対応可能ですので、いつでもお気軽にご相談ください。

就業規則作成に関する無料相談はこちらから

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この記事の著者

小木曽 裕子

社労士

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