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弁護士コラム Column

婚約破棄と慰謝料請求の流れを弁護士が解説

2024年09月17日
名古屋丸の内本部事務所  弁護士 奥村 典子

婚約破棄と慰謝料等請求

婚約破棄について、合意による婚約の解消であればともかく、一方的に婚約を破棄された側は心が深く傷つくことになります。

​​また、結婚の前であっても、結婚の準備にお金をかけていたり、結婚のために仕事をやめていたりなどすることもあり、それらの費用や損失はどうすればよいのかという問題も生じます。

​​​​婚姻届を提出して正式に結婚する前であっても、婚約を不当に破棄されたといえる場合には、破棄者(相手方)に対し慰謝料請求できる場合があります。

​​とはいえ、単に交際して結婚を期待していたというのみでは、婚約の成立が認められないこともあります。

​​また、仮に婚約が成立していたとしても、正当な理由による破棄であれば慰謝料は発生しません。

​​婚約破棄を理由に慰謝料を請求するためには、

​①婚約が成立したといえるだけの事情があること
​②婚約が正当な理由なく破棄されたこと


​​などが必要となります。

婚約の成立とは

婚約(婚姻予約)とは、将来において適法な婚姻をすることを目的とする契約のことです。

​​簡単にいえば将来結婚しようという合意のことですが、確かな合意であれば口頭でも成立はします(ただし、相手方が争ってきた場合の立証などの問題については下記のとおり)。  

​​ 一方で、例えば「いつか結婚したいね」とか「いつか結婚できるといいね」などの発言は期待にすぎず、確かな合意が成立していたとはいえないと思われます。

​​事情によるとは思いますが、結婚の期待に留まる場合には、婚約の成立が認められないこともあります。

​​明確なプロポーズの言葉がなくとも、婚約の成立を示す事情として、親族や友人への紹介や挨拶、結納やそれらの準備、婚約指輪の交換、結婚式場の予約をしていたなどの事情があれば、婚約の成立が認められる可能性があります

​​ もっとも、実際に慰謝料を請求する場合には、相手方が婚約の成立を否定してくる場合もあるため、交渉や裁判においてこれらの事情を証明する証拠も必要となるでしょう。

​​そのため、婚約の存在を裏付ける証拠の有無は重要といえます。

婚約破棄について正当な理由がないこと

さらに、相手方において婚約を破棄する正当な理由がないことが必要です。

​​ 他に好きな異性ができた・愛情が無くなったなどの単純な心変わり、性格の不一致、親や親族が反対しているなどの理由では正当な理由とは認められないでしょう。

​​ 一方で、婚約破棄が正当と認められる例として、浮気、虐待・暴行・重大な侮辱、重大な精神疾患の発症、その他社会常識を逸脱したような言動などが考えられます。

​​なお、破棄された側に上述のような落ち度がある場合には、慰謝料請求できない可能性もあります。

婚約の存在を裏付ける証拠

上述のとおり、実際に慰謝料を請求する場合に、婚約の存在を裏付ける証拠の有無は重要といえます。証拠としては、以下のようなものが考えられます。

  1. ​​・相手方とやりとりしたLINEやメール、手紙、その他のメッセージカードなど、相手方の結婚意思を示す記載内容があるもの
  2. ・相手方との会話の録音データなどで、相手方の結婚意思を示す発言があるもの
  3. ・受け取った婚約指輪の現物がある、婚約指輪を購入した際の領収証がある
  4. ・結納式を行った際の写真、領収証などがある
  5. ・結婚式場の予約資料などがある
  6. ・新婚旅行の申込み資料などがある
  7. ・新居の申込み資料などがある

​​なお、親族や友人に紹介や挨拶をしたような場合に、それらの親族や友人に証言してもらうという方法も考えられはしますが、証言の内容によるところはあるものの、証言については書面などの客観的証拠と比較して証拠価値が低いとされることがあります。

婚約破棄の慰謝料の算定要素

婚約破棄の慰謝料の算定要素は、

​​交際期間・同居期間・婚約期間などの長短、婚約破棄のタイミング、当事者の社会的地位・収入、婚約破棄時の年齢、妊娠・中絶・出産の有無、挙式・披露宴・結納やそれらの準備の有無、親族や友人への紹介の有無、婚約破棄に至る経緯など多岐にわたります。  

​​婚約破棄による慰謝料の相場は、離婚による慰謝料の相場より低額で数十万から200万円程度になっていると思われ、多くの事案ではそれほど高額にならない印象です。

​​また、それぞれの事情による賠償額の幅が広い印象です。

​​ 交際期間・同居期間・婚約期間が長いとか、すでに妊娠・出産していたとか、結婚を前提として勤務先を退職しているなどの事情がある場合には、慰謝料が比較的高額になりやすいと考えられます。

なお、慰謝料の他に、結婚を前提として勤務先を退職した場合の逸失利益や結納金の返還、結婚式場のキャンセル料の支払いなどを請求できる場合もありますので、その他の請求の可能性についても検討する必要があります。

​​もっとも、返還を求める側に婚約破棄の帰責性がある場合には信義則上、返還請求が制限されることはあります。

婚約指輪の返還

婚約指輪を渡す行為は、婚約して結婚することを目的、条件とする贈与契約と考えられます。

​​婚約破棄となった場合には、目的、条件が達成されなくなったとして、婚約指輪を受け取った側に婚約破棄の原因がある場合には、返還を求めることができます。

​​ただし、婚約指輪を与えた側に婚約破棄の帰責性がある場合などには、信義則上、返還請求が制限されることもあります。 婚約指輪がすでに処分されてしまっていても、指輪の返還に変えて、指輪の価格相当の損害賠償を請求できる可能性もあります。

結納金の返還

結納金とは婚約が成立したときに当事者や両家の絆を深めることなどを目的として渡される金銭であり、その性質としては一種の贈与であると考えられます。

​​そのため婚約破棄にて婚姻が成立しなかった場合には、結納金を贈与した目的が達せられなかったとして、返還を求めることができます。

​​ ただし、結納金を贈与した側に婚約破棄の帰責性がある場合などには、信義則上、返還請求が制限されることもあります。

結婚式場のキャンセル料や新居の準備に要した費用などの請求

結婚式場のキャンセル料や新居の準備に要した費用なども、婚約破棄を原因として生じた財産的損害として、婚約破棄の原因をつくった側に対して請求できる場合があります。

慰謝料請求などをする場合の具体的な流れ

相手方との話し合い

それぞれ事情は異なりますので、実際にどのように請求をするかは、各方法のメリット、デメリットなどをふまえて、個々のケースにあわせて慎重に判断すべきでしょう。  

​​相手方と直接話し合うことができる状況であり、比較的円満な話し合いが可能であれば、相手方と直接話し合うことで、短期間かつ比較的円満に解決に至る可能性もあります。  

​​なお、相手方との話し合いがまとまり合意に至った場合には、示談書を作成したほうがよいでしょう。

​​口約束のみでは、後に言った言わないのトラブルが生じる可能性があります。

​​また、相手方が約束を守らず慰謝料などを支払ってくれなかった場合に備え、相手方との合意内容を証拠として残しておく必要性もあります。

一方で、お互いの主張が異なったり、感情的な対立が生じたりするなどし、相手方と直接話し合うことが困難な場合もあります。また、直接話し合えたとしても、感情的な対立が激しい場合などには新たなトラブルを招く場合もあります。  

​​相手方と直接会って話し合うのではなく、内容証明郵便(送付先や内容を郵便局が証明してくれる郵便)などを送付する方法も考えられますが、それにより相手方が支払いに応じればともかくとして、相手方が支払いに応じない場合には内容証明郵便を送付しても解決には至らない場合もあります。

裁判所の手続

話し合いによる解決が困難な場合、裁判所の手続などを検討することとなります。  

​​例えば慰謝料請求調停の申立てや訴訟提起などですが、どのような手続を選択するかは、それぞれの事情にあわせて検討すべきでしょう。

​​相手方との話し合いが決裂した場合、すぐに訴訟提起することもできますが、事情によっては慰謝料請求調停を申し立てる選択肢もあります。

​​調停は、裁判のように勝ち負けを決めるのではなく、話合いによりお互いが合意することで紛争の解決を図る手続です。

​​訴訟に比べて手続が簡易であること、話し合いでの解決を目指すため比較的円満な解決が期待できること、非公開で行われるためプライバシーが守られることなどの特徴があります。

一方で、調停はあくまで話し合いによる合意を目指すため、双方の合意がなければ調停は不成立になります。相手方が欠席する場合には、話し合いすら行えず手続自体が終了することもあります。  

​​話し合いでは解決できないと予想される場合や、調停が不成立になった場合などには、訴訟提起して慰謝料などを請求していくことになります。

相手方から任意の支払いを受けられない場合

訴訟にて支払えとの判決がでたにもかかわらず、相手方が任意の支払いをしてくれないこともあります。  

​​そのような場合には、督促状を送るなどして支払いを促す方法もありますが、強制執行を行う場合もあります。

​​強制執行とは、相手方の給与や銀行預金などを差し押さえることで強制的に回収を行う手続のことですが、強制執行には債務名義などが必要であり、裁判所への申立てが必要です。

弁護士に依頼するメリット

(1)相手方と直接やりとりをし、慰謝料などの話し合いをすること自体がストレスになる方もおられますが、弁護士が代理人として相手方と交渉することにて、ストレスが軽減されると思われます。

​​(2)直接当事者が話し合う場合、互いに感情的になるなどし、さらなるトラブルを招くこともあります。​​慰謝料を請求する方法などによっては、逆に相手方から脅迫だとか名誉毀損だなどと言われてしまう場合もあります。弁護士が代理人として相手方と交渉することでそのようなトラブルを防止することもできます。

​​(3)弁護士から連絡があると、相手方が事態を真剣に受け止めて対応する場合もあります。

​​(4)どのような証拠でも収集できるというわけではありませんが、弁護士が弁護士照会などの方法を利用することで、個人では収集が難しい証拠収集を検討することもできます。

​​(5)随時、状況に応じた法的なアドバイスが可能であり、相手方との交渉が決裂した場合でも、訴訟手続などを適切に対応することができます。代理人として訴状等の作成や提出、その後の裁判手続の対応などを行います。

​​相手方が任意に支払わず強制執行をしなければならない場合にも、手続を弁護士に任せることができます。

当事務所では、婚約破棄に関するトラブルについて初回無料の法律相談を実施しています。詳しくはこちらをご確認ください。

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この記事の著者

奥村 典子

弁護士

奥村 典子(おくむら のりこ)プロフィール詳細はこちら

名古屋丸の内本部事務所

所属弁護士会:愛知県弁護士会

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