この養育費,減額できるのはどんな時?
2022年10月26日
岡崎事務所
弁護士 安井 孝侑記
岡崎市の離婚件数は令和2年度の統計によると831件*でした。離婚件数は平成28年度から毎年800件以上*と、たくさんの方が夫婦関係で悩んでいる事が伺えます。(*岡崎市統計ポータルサイトより)
そこで、今回は離婚問題の中でも「養育費の減額について」愛知総合法律事務所 岡崎事務所所長弁護士が解説します。
養育費の減額について
よくある相談等で,養育費の問題があります。離婚調停を行って,最後に離婚を成立させる際に,お子さんがいらっしゃると養育費を決めることがほとんどです。 そこで,皆さんがよく気にされるのが養育費を一度決めたら変更することができないのかという点です。
養育費の変更は合意の上でいつでも可能
まず,当たり前ですがお互いが合意すれば,養育費の変更はいつでも可能です。
裁判所で養育費の金額を決めていたならば,この内容の取り決めを変更しておくべきです。
次に,仮に元配偶者と合意できない場合には,いかなる場合に養育費の増減額が可能になるでしょうか。
一般論からいうと養育費の増減額が可能となるのは,もともとの取り決めの際に考慮された事情,取り決めの前提や基準とされた事情に変更が生じた場合に限るとされています。
私のイメージとしては,上記の基準はなかなかにハードルが高いという印象があります。
このため,養育費を決定する場合には,慎重に決定すべきと思われます。
養育費の決め方と減額調停について
これも最近,多い相談ですが
・現在の年収は残業・夜勤が多く,将来役職が変われば,むしろ収入は下がってしまうであろう。
・自分の業界は斜陽産業であるから,企業の成長は見込めず,給与は下がっていく可能性は高い。
といった理由から,現在の年収で養育費を決めることをためらう方がいらっしゃいます。
ここで,裁判所の養育費の決め方は比較的定型的であり,
お互いの年収を,源泉徴収票等の資料から算出して,養育費算定表にあてはめて,計算します。
その中で,
・将来残業代が減る可能性がある
・将来,会社が不景気で給与が下がる可能性がある
といった理由では,裁判所では算定表の基準を逸脱する結論は出さない印象です。裁判所は,実際に大きく減収したときに減額調停をすべきである,という考え方のようです。
しかし,じゃあ養育費の減額調停を申立てたときに,簡単に減額が認められているかというと,以前ご説明したとおり,そんなに簡単ではない印象があります。
具体的には,算定表でいうと,算定表の枠を2つくらい下がるほどでないと認められないケースが多いのではないかと思います。※もちろん,ケース・バイ・ケースであることは前提ですが。
以上のとおり,養育費等の減額が認められるほどの事情変更というのは簡単に認められないという結論になっていますが,私としてもこれは妥当ではないと思っています。
養育費算定表について
まず,そもそも裁判所が養育費の算定に関して,かなり強力に算定表を用いるところですが,
当該算定表を用いるのであれば,本来毎年更新するべきではないかと思います。
今までの日本社会は,年功序列制度で年月が経過すれば,片側配偶者の年収は増加していたところ,今後はそうともいえず,変動がありうるところで,社会の実態にも即していないと思います。
ただ,これができない理由として,強制執行をできる裁判所の決定の文書にできないことがあるものかと思いますが,これも現代であれば解決できるはずです。
なぜなら,裁判所は前述のとおり算定表を機械的に算出することがほとんどですので,当事者双方が自身の年収資料を持参すれば,即日計算できるはずで,簡単に変更できると思います。
このように毎年,計算式に基づき再計算するとすれば,離婚時の養育費に,支払う側も,
「年収が下がればまた来年計算すればいい」として,離婚時の協議も無用な紛争が減るのではないかと思います。
また,賛否はありますが,収入に関しても,マイナンバー等で紐付けすればより機械的かつ簡易的に算出することも可能でなないかと思います。
こうすることで,弁護士が担当するべき事件は,「算定表で機械的に算定できない困難な事件」に限って,対応すればよくなり,弁護士が入るべき事件とそうでない事件との峻別にもつながるでしょう。
養子縁組をした場合の子供の養育費
離婚後に養育費が下がるかどうかの問題としてよくあげられるケースとしては
「親権者となった一方配偶者が再婚して,子供たちが再婚相手と養子縁組をした場合」が挙げられます。
基本的に,婚姻費用を受け取る側の一方配偶者が,再婚してその再婚相手と子供が養子縁組をした場合には,その子供の扶養義務は,第一次的には,婚姻費用を受け取る側の一方配偶者とその再婚相手が負うこととなります。
このため,もともと支払っていた他方配偶者に,一方配偶者は婚姻費用の支払いを求めることができなくなります。
養子縁組をしたのであれば,その再婚相手に対してまず請求を行うべきである,ということになります。
ただし,その一方配偶者と再婚相手の収入が極めて少なく,子供の養育費が不足するような場合には,養子縁組があってもなお,養育費の支払いをすべき場合があります。
どのような場合に支払うべきか,どれくらい支払うべきかは事案によりけりですので,この場合には弁護士に一度相談をおすすめします。
また,いつの時点から,支払いが不要になるのか,という問題が別に生じます。
これについても
・支払う側が,養育費の減額の意思表示をしたとき
・養育費支払い義務の変更事由が発生したとき(今回でいうと再婚して養子縁組をしたとき)
の2つが考えられますが,これも確定的な基準があるわけではなく,いずれの判断もなされています。
これについての私の印象としては,一度払ったものを,遡って返金するとなると裁判所としてもなかなかハードルが高くなるのではないかと思います。
養子縁組時から養育費の支払い義務が消滅したと判断した審判例も,もともと養育費の支払い自体がなされていなかったものであり,実際に子供がどちらにも扶養されていない期間がなかったということもひとつ遡及された理由かと思います。
よく,知らない間に再婚されて養子縁組されたらどうするんだと心配される方がいらっしゃいますが,戸籍等からもわかりますし,何よりきちんと面会交流等をして交流をもっていれば,全く把握できていないというケースは少ないのではないかと思います。
養育費を含む離婚の問題でお悩みの方は一度弁護士にご相談されることをおすすめいたします。
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