逮捕のネット記事は削除できる?弁護士が解説
2022年11月28日
名古屋丸の内本部事務所
弁護士 岩田 雅男
はじめに
刑事事件は、一生を左右するような事柄です。刑事手続自体が終わったとしても解決しなければならない問題が残ることがあります。 今回は、そのようなケースとして、「自分が逮捕された事実がインターネット上のウェブサイトに書き込まれてしまっているケース」をご紹介いたします。
逮捕されたというネット記事は名誉棄損にあたる?
インターネットによる書込みが誰でも手軽にできる時代になりました。
便利になった一方で、名誉毀損やプライバシーを侵害する書込みが数多く見られるようになったのも事実です。
中には、「自分は、逮捕されてしまったが、そもそも刑事裁判にかけることもなく、不起訴処分で終わったのに、逮捕されたニュースの記事が転載された書込みがネット上の掲示板にずっと残っている。こちらの事情も知らないのに、勝手に想像して人格を否定する書込みがある。」といったケースもあります。
まず、そもそもこのようなケースで、名誉を毀損されていると主張することができるのでしょうか。
この点については、インターネットにおける表現の自由の価値と名誉権の侵害の度合いを比較して、名誉権の侵害の方が重いと言えるのであれば、名誉を毀損されていると主張することが可能です。
名誉権も重要な権利である一方で、ある人が逮捕されたという事実は、公共的にも重要な表現であるとして、表現の自由の価値も高いと言えます。
したがって、このケースで、どちらが優先するのかを即断することは難しいですが、「逮捕」はただちに罪を犯したことが確定したことを意味しないこと、不起訴処分になっている以上、報道の価値としても高くないことなどを強調して、名誉権の侵害の方が重いということもできそうです。
このようなケースでは、どのように対処すればよいでしょうか。
不起訴処分におけるネット記事の削除
最初に思いつくのは、実際に書込みをしている人を特定して、その人に削除や損害賠償を求める方法です。確かに、書込みをしている人を特定する裁判上の手続はありますが、特定に時間がかかることもあります。
そこで、考えられるのが、掲示板を管理している業者に削除を求めることです。掲示板を管理している業者にも、自らが提供しているサービスに人権を侵害している情報が掲載されている場合には、削除に応じるべき義務があります。
管理業者に削除を求めると、場合によっては、裁判手続によらずに任意に削除をしてもらえることもあります。
以下では、どのような情報を削除することができるのか、主要な最高裁判例をご紹介したいと思います。
Googleの検索結果からの削除は厳しい
最高裁は、平成29年1月31日、以下の事案でGoogleの検索結果からの削除を否定しました。
この事案は、平成23年11月に児童買春・児童ポルノ禁止法に逮捕され、罰金に処された人物が、その逮捕に関する情報がインターネット上に拡散されていたケースで、Google検索で、その人物名と居住する都道府県を入力すると、逮捕に関する情報の検索結果が表示される状態であったために、検索結果の削除を求めた事案です。
この事案で最高裁は、Googleの検索結果は、現代社会においてインターネット上の情報流通の基盤として大きな役割を果たしていることから、厳しい基準を用いて、結果として削除を否定しました。
この判決を受けて、Googleの検索結果からの削除はかなり難しいものと考えられています。
Twitterの削除はGoogleの検索結果からの削除よりは易しい?
一方、同様に逮捕に関する情報に関して、Twitterの投稿の削除について、最高裁は令和4年6月24日、削除を認める判決を下しました。
この事案は、平成24年4月に、旅館の女性用浴場の脱衣所に侵入したとして逮捕され、罰金刑に処され、罰金を納付した人物についての逮捕に関するTwitterの書込みが認められたものです。
最高裁は、Twitterは、140文字の字数制限の中で速報的に用いられ、長期間にわたって閲覧され続けることは想定されていないことなどを踏まえて、Googleの検索結果からの削除の場合よりもやや緩やかな基準を用いて、削除を認めました。
この最高裁判決からは、SNSの性質に応じて削除が認められる基準が異なることが示されており、事案に応じた検討が求められることが分かります。
特に本記事で取り上げた不起訴処分の場合には、逮捕よりも、公共性が下がる報道であることから、より削除が緩やかに認められるのではないか等、事案に応じた主張が必要になるものと考えられます。
逮捕記事削除を弁護士にご依頼いただくメリット
これらの点を踏まえて弁護士にご依頼いただくメリットは以下のとおりです。
① 技術的・法的に複雑な事案に応じた処理が可能である
インターネット事件は技術的にも複雑ですし、法的にも複雑な事案が多いです。
これらの事案に応じた適切な処理は、さまざま考えられます。弊所では、それぞれの事案に応じた手段についてメリット・デメリットをお伝えして適切な手段を選んでいただくことが可能です。
② 業者が弁護士からの請求には応じる可能性がある
サイトの管理業者は、独自のフォームを設けて削除の申請を受け付けていることもありますが、一般の方からの申立てに対しては対応を行わないこともあります。
一方、弁護士からの請求であれば、本格的な法的措置が講じられることも予想できることからか、数日でご対応をいただくこともあります。
ネット記事削除実績はこちらー弁護士法人愛知総合法律事務所の実績ー
MEO業者による対価を伴う削除請求は法律で禁止されていること
なお、最近、Googleマップの口コミや検索順位を上げる業者(MEO業者)から、「削除の対応をするので、○円の報酬をください」といったサービスの提供を受けており、この点でのトラブルのご相談をいただきます。
しかしながら、権利を守るための業務については、弁護士法上、原則弁護士しか行えないことになっています。
ネット記事の削除業務についても弁護士法に違反する可能性があります。
削除を検討する場合には、まずは弁護士にご相談をいただければと存じます。
このような形で、削除に応じてもらうことができれば、刑事手続による二次被害を最小限に抑えることができます。刑事手続自体が終了しても、解決しなければならない問題が残っているという方がいらっしゃったら、是非気軽にご相談ください。
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