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弁護士コラム Column

弁護士業務と法改正

2015年09月01日
名古屋丸の内本部事務所  弁護士 勝又 敬介

 先日、久しく連絡を取っていない司法修習の同期からFAXが送られてきました。
 何事かと見てみると、司法研修所を卒業してから10年を記念して開かれる同窓会への招待状でした。名古屋での修習と和光での2回試験を終えて、故郷を離れてここ名古屋で若手新人弁護士として登録をしたのが平成17年10月でしたから、はやいもので今年の10月で弁護士生活満10年を迎えることになるわけです。
 この10年間一度も会っていない同期が多いので、みんながどれだけ変わったのか見るのが楽しみなような、怖いようなといったところです。私自身は、「最近貫禄が付きましたね」と言われることが増えていますが、きっと腹回りのことだけではないと信じています。 ところで、この10年で変わったのは私の腹回りだけではありません。
 私たち弁護士の業務は、いうまでもなく法的知識を要求される仕事ですが、その基礎となる法律もここ10年で新法の制定や改正が行われました。
 私が弁護士登録をした10年前は、サラ金業者からの高利の貸付に苦しむ多重債務者が非常に多く、取り扱う事件も過払金の回収や自己破産の申立など債務整理事件が多数ありました。当時は貸金業規制法という法律がありましたが、最高裁判決や世論の動きを受けて、貸金業法という新たな法律が制定され、利息制限法の改正なども行われ、これを受けて多重債務者は大幅に減少し、債務整理事件も減少しました。
 現在は私が取り扱う事件の中では交通事故が増えていますが、交通事故に関しても広く報道されたような悲惨な交通事故の発生を踏まえ、刑法が改正されて自動車運転過失致死傷罪が新設され、更には「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」が制定されるなど、厳罰化の動きが進みました。
 この間に道路交通法も改正が繰り返され、これらの改正を受けて交通事故における過失割合の認定にも影響を及ぼすようになっています。例えば、後部座席のシートベルトについては、私が学生の頃は締めている人を自分自身も含めて殆ど見た記憶はないのですが、現在はタクシーなどでも後部座席もシートベルトを締めるように言われることも増えており、意識の変化を感じます。裁判例で見ても、後部座席でシートベルトをしていないケースで過失相殺を認めた裁判例などは増えています。
 債務整理や交通事故以外でも、昔も今も変わらずコンスタントに扱う事件として離婚事件や相続事件がありますが、離婚や相続を規律する民法にも改正がありました。 私が司法試験の勉強をしていた頃と比較して時代の流れを感じるのは、非嫡出子(法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子どものことをいいます)の相続分が嫡出子(法律上の婚姻関係にある男女の間に生まれた子どものことをいいます)の半分とされていた民法900条4号ただし書前半部分について、最高裁が違憲と判断して、これを受けて民法の規定も改正され、非嫡出子の相続分も嫡出子と同等になったことです。
 私が弁護士になる前の受験生の時代には、900条4号ただし書前半部分の合憲性を問う憲法の問題は、司法試験予備校の論文試験で時折出てくる典型問題であり、私も当時からこの規定の合憲性には疑問を感じていましたが、こうして実際に法改正までされてみると、感慨深いものがあります。
 弁護士の業務は、こうした法改正や新たな判例に対するキャッチアップが欠かせません。当事務所では毎年のように新人弁護士が入所してきますが、彼らに先輩弁護士としての貫禄と威厳を見せつけるためにも、依頼者の皆様により適切な法的サービスを提供するためにも、脂肪ではなく知識を蓄え、10年の節目を迎える中堅弁護士として一回り成長することを目指したいと思います。

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この記事の著者

勝又 敬介

弁護士

勝又 敬介(かつまた けいすけ)プロフィール詳細はこちら

名古屋丸の内本部事務所

所属弁護士会:愛知県弁護士会

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