離婚のときに家具や家電はどうなるの?弁護士が財産分与を解説
2023年10月06日
名古屋丸の内本部事務所
弁護士 勝又 敬介
夫婦が離婚する際には、財産分与によって、夫婦が婚姻生活中に築いた財産を双方で分割することになります。
財産分与では、預貯金、不動産、生命保険や学資保険、有価証券、車などが中心的な争点になることが多いのですが、ときとして家具や家電等(法律的には、動産といいます)の分け方についても争いになることがあります。
家具や家電(動産)の財産分与を行う時の基本的な考え方
動産の財産分与を行う時の基本的な考え方は、
- ①夫婦が婚姻後に取得した財産は基本的に共有財産として分与対象となる
- ②婚姻前からどちらかが所有していた財産は特有財産として所有者のものになる
- ③夫婦が結婚前から持っていた特有財産から購入したものも原則として特有財産となる
- ④どちらか専用のものとして購入した動産は、原則として専用財産として特有財産になる
といったものです。
もっとも、③の特有財産から購入したものといえるか、④の専用財産に当たるかは解釈が分かれることも多いので、注意が必要です。
その上で、平等に分けるためには、中古販売業者に売却して金銭で分ける、あるいはインターネットなどで個々の動産の価格を調べて、動産を取得する側が他方に対して金銭を払う等の方法もありますが、売却すると非常に低額になってしまうことが多いですし、細かいところまでやろうとするとかなりの手間がかかります。
そのため、多くの場合には、双方の話し合いで譲り合って、どちらがどれを持っていくのかについて決めるのですが、中には当事者間だけでは決着がつかないし喧嘩になりかねないから等の理由で、私たち弁護士が、動産の財産分与に立ち会ってもらえないか依頼者から相談されることもあります。
こうした場合には、離婚を控えて感情的に対立している当事者の仲立ちを行う必要がある上に、かなりの時間的拘束となるので、弁護士側の負担が大きく、通常は弁護士に対して日当を支払っていただくことになります。
それでもその場で決着するには双方の譲り合いが必要という点は変わらないため、個人的にはあまりお勧めはしません。
また、負担が大きいので動産の分与の場にはできれば立ち会いたくないというのが多くの弁護士の本音だと思います。
いずれにしても、当事者間で協議を経ても決着がつかない場合、家具や家電などの動産類も法律的には財産に当たりますので、裁判所での調停や審判で決着を図ることも考えられます。
しかしながら、家庭裁判所としても家庭内の動産類の財産分与まで踏み込むのはなかなか難しい面があり、「当事者間で話し合ってなんとか調整してほしい」という形になることが多いのが実情です。
というのも、
①動産類は種類も多種多様で、その上預金や土地などと違って時間の経過とともに財産的価値が減少していくという問題があり、かつ成熟した中古品市場がないものが多いので、財産的評価をきちんと行うのが非常に煩雑かつ困難であり、財産的評価になじみにくい
②2つに分けられる預貯金などと違って(端数の問題はありますが)、家具や家電は現物を2つに分けるわけにもいかないため、平等な財産分与を実現しにくい
③中古の動産類は多くの場合にはその経済的価値が不動産や預貯金などに比べるとそれほど高額ではないケースが多く、突き詰めて議論することの実益が、財産分与全体との金額的比較や手間暇を考えると乏しい
等の事情から、裁判所としても正面からこれを取り扱うことには消極的な部分がある為です。
それでも、一応手続き的には、当事者が強く求めれば、動産類についても引き渡しを求める審判を行うことは可能ですし、金銭的な清算を相手方に求めることも可能です。
その際には、
①個々の動産の存在自体の立証(夫婦の一方が家から閉め出されているような場合などは、動産の有無から争いになることもあります)
②分与時点でどちらが当該動産を管理しているか
③個々の財産が共有財産に当たるのか、特有財産もしくは専用財産に当たらないか、といった点の立証
④個々の動産の現在の価格の立証(直接的な証拠がなければ過去の購入時の価格や購入時期から推定するなどの方法も考えられます)
等を行っていくことになります。
もっとも、繰り返しになりますが、非常に煩雑な割に実益が乏しいので、動産の財産分与は極力当事者同士で譲り合い、話し合いで決める方が望ましいでしょう。