残業代が支払われない!残業代請求について弁護士が解説
今回は、残業代請求について解説します。やや取り留めのない内容となりますがお付き合いいただければと思います。
残業代が支払われないのは違法じゃないの?
残業代の支払いをしない会社・経営サイドのよくある言い分として、「固定残業代を支払っているから、重ねて残業代を支払う必要はない」、「基本給の中に残業代が含まれているから、重ねて残業代を支払う必要はない」などというものがあります。
しかし、裁判例上は、基本給のうち残業代にあたる部分が明確に区分されて合意され、かつ労働基準法所定の計算方法による残業代がその額を上回るときはその差額を支払うことが合意されている場合にのみ、その支払いを残業代の支払いの全部又は一部とすることができるとされており、こうした言い分により残業代の支払いをしないことが正当化される場合は非常に限定されているといえます。
また、「管理監督者であるから残業代を支払う必要はない」などというものもあります。
労働基準法上、いわゆる管理監督者は労働時間に関する規定の適用除外とされていますが、裁判例上は、労働者が管理監督者にあたるかどうかは、名称にとらわれず実態に即して判断すべきとされており、その範囲を限定的に判断する傾向があるといえます。
さらに、残業代の算定の基礎となる労働時間について争いがあるために、会社・経営サイドが残業代の支払いをしない場合もあります。
こうした場合に労働時間を立証する証拠については後述します。
いずれにせよ、会社・経営サイドの言い分を鵜呑みにせず、残業代が支払われないことが違法であるかどうかを判断する必要があります。
残業代請求に役立つ証拠?
残業代請求において、労働時間の立証責任は原則として労働者が負うとされていますので、労働時間について会社・経営サイドと争いがある場合には、労働時間を立証する証拠が必要となります。
労働時間を立証する証拠として典型的なものは、タイムカードやIDカードです。ただし、タイムカードの打刻を現実より過少にさせられているようなケースでは、これを覆すための後述のような実質的な証拠が必要となります。
タイムカードやIDカードの他、裁判例上は、労働者がパソコンソフトを立ち上げ出退社時刻を記録した時刻やICカード乗車券利用明細の時刻により労働時間を認定した例もあります。
このような証拠がない場合にも、時刻記載のある業務日報、家族との電子メールやLINEの送受信記録、労働者本人が作成したメモ等が、労働時間の認定に役立つ証拠となる可能性があります。
残業代請求の時効はいつ?
従前、時効は2年とされていましたが、改正労働基準法が施行された2020年4月1日以後に発生した残業代には、改正後の時効が適用され、時効は3年です。
この時効は当分の間の経過措置であり、将来的には伸長されることが予想されます(改正労働基準法の条文上は、時効は5年とされています。)。
残業代請求を弁護士に依頼するメリット
残業代の不払いに対する対処方法としては、会社・経営サイドとの交渉や労働基準監督署の利用が考えられますが、これらにより解決しない場合には、裁判所の利用を考える必要があります。
裁判所の利用にあたっては、労働時間等について的確な主張立証が必要となりますが、残業代請求を弁護士に依頼することにより、裁判例等に関する知識をもとに的確な主張立証ができる可能性が高まります。
また、残業代請求を弁護士に依頼することにより、会社・経営サイドとの交渉を直接行わなくて済み、精神的負担の軽減も図ることができます。
残業代の不払いにお困りの方は、一度弁護士にご相談ください。