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弁護士コラム Column

遺留分侵害額請求をわかりやすく弁護士が解説

2023年02月16日
名古屋丸の内本部事務所  弁護士 岩田 雅男

遺留分の侵害が問題となる具体例

闘病中の父が亡くなってしまったが、父が遺言を残しており、同居していた姉に全ての財産を相続させるという遺言を残していました。自分も子どもであることは間違いないから、自分にも何か権利がないでしょうか。

​​ こんなときに問題になるのが、「遺留分」です。

​​典型的な例は、さきほど述べたような「一人の相続人に、全ての財産が相続させることになったことによって、他の相続人が何も財産を引き継げなくなった」といった事例です。

​​ このような事案で、同じ相続人なのに、かたや全ての財産を引き継ぎ、かたや一切権利が認められないということになると、残された相続人間で、不平等が生じるので、このような事案であっても、最低限、他の相続人にも権利を与えよう、というのが遺留分の制度です。

遺留分減殺請求権?遺留分侵害額請求権? 

インターネットや書籍で遺留分について調べると、「遺留分侵害請求権」という言葉があったり、「遺留分減殺請求権」という言葉があったりします。 実はこれは、法改正によって、権利の名前が変わったことが原因です。

​​ 近年の民法の改正によって、「遺留分減殺請求権」から「遺留分侵害額請求権」に名称が変わりました。

​​ ちなみに、改正前の「遺留分減殺請求権」は、「いりゅうぶんげんさいせいきゅうけん」と読みます。よく、「減殺」の部分を「げんさつ」と読み間違えることがあります。

​​以前、フジテレビのリーガルハイというドラマで、「げんさつ」と読み間違えてしまう回が放送されたことがあり、ドラマ好きの弁護士の間では話題になりました。

​​ 漢字が読みづらかったことが原因ではないのですが、法改正で権利の名前が変わりました。

​​ここでは、改正後の「遺留分侵害額請求権」についてご説明します。

遺留分侵害額請求権とは

「遺留分」とは、さきほど説明した、たとえ遺言があったとしても、相続人が、あとから確保をすることができる持分のことです。

​​「遺留分侵害額請求権」とは、このような最低限確保できる遺留分が侵害された場合に、侵害している分だけ金銭を請求することができる権利です。

遺留分侵害額請求ができる人

遺留分侵害額請求ができる人は、まずは、
​①親や祖父母等、直接血のつながった目上の人です(直系の尊属といいます。)次に​②配偶者です。最後に、​③子です。
​​③の子の場合は、子が先に亡くなっていた場合には、その子らも遺留分を持ちます。

遺留分の割合の計算

遺留分の割合は、「遺留分割合」×「相続分」で決まります。

​ そして、最低限の遺留分の割合は、①直系の尊属のみが相続人であった場合は、3分の1、​②それ以外の場合には、2分の1になります。
​ ​
​​ 例えば、両親のみが相続人だった場合は、
​​①にあたります。​​したがって、遺留分割合は3分の1です。
​​そして、両親のみが相続人であった場合には、それぞれの相続分は、2分の1です。

​​ したがって、遺留分の割合は、3分の1×2分の1=6分の1となります。


​​ また、配偶者と子2人が相続人だった場合は、
​​②にあたります。したがって、遺留分割合は、2分の1です。
​​​そして、配偶者の相続分は、2分の1、子それぞれの相続分は4分の1です。

​​したがって、配偶者の遺留分の割合は、2分の1×2分の1=4分の1、子それぞれの遺留分の割合は、2分の1×4分の1で8分の1となります。

​​ このあたりは、相続分の計算の仕方を踏まえることになりますので、詳しくは弁護士までお尋ねください。

遺留分侵害額請求権の時効と除斥期間

遺留分侵害額請求権は、その権利を使いたいという意思を表示しなければ、発生しません。

​​ そして、いつまでも、権利の行使を待つことはできず、「自分の遺留分が侵害されたことを知ってから」1年の時間を経過すると、時効によって権利の行使ができなくなります。

​​ また、たとえ侵害を知らなかったとしたとしても、亡くなってから10年が経過すると、自動的に権利が消滅します(除斥期間)。

​​きちんと意思の表示をするためには、手紙できちんと伝える等の方法が必要です。

遺留分の侵害額請求をする前にしておくとよい準備

遺留分の侵害額請求をする前にしておいた方がよい準備は、

​①亡くなったご家族の預貯金の金融機関(できれば支店、口座番号まで)を把握しておくこと、
​②不動産の所在も把握しておいていただけると助かります。
​③その他株式等の財産も控えておくのもよいでしょう。


​​ また、相続の財産の総額は、亡くなった生前のご家族が、特定の相続人に高額の金銭の援助をしていた場合にも変わります。 そこで、家族の誰かが金銭の援助を受けていた場合には、いつごろ、誰が、どのくらいの金銭の援助を受けたのかを把握しておくのがよいです。

​​ 弁護士にご相談いただく場合には、できれば出来事を時系列にまとめていただくのがよいと思います。

改正前の遺留分減殺請求権になる場合

冒頭で述べたとおり、遺留分については、法改正によって、大きく内容が変わりました。 ご家族が亡くなったのが、2019年7月1日より前の場合には、改正前の法律が適用されます。 この場合でも弁護士にご相談ください。

弁護士に依頼するメリット

遺留分制度は、計算方法・遺留分の行使の方法・相続財産の調査など、複雑で専門的な事柄が多く関わっています。 特に権利の行使を行っておかないと、そもそも権利が使えなくなってしまうため、ぜひおはやめに弁護士にご相談ください。

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