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弁護士コラム Column

遺産分割における利益相反の問題について

2021年07月01日
浜松事務所  弁護士 中村 展

 名古屋丸の内本部事務所で執務しております,弁護士の中村です。今回は,相続の問題でご依頼いただくときなどに非常に大事な,弁護士のルールについてご紹介したいと思います。

​​  例えば,被相続人Aさんの相続人が,配偶者のBさん,子がCさん,Dさん,Eさんだったとします。Aさんが遺した遺産の分け方について,BさんとCさん,Dさんの意見は一致しているけれども,Eさんだけ反対しているという状況で,Bさん,Cさん,Dさんが,Eさんを相手方として遺産分割協議の依頼をしたいと事務所にお越しいただくことがよくあります。

​​  弁護士としては,皆さんのお力になりたい気持ちは山々なのですが,ここで気を付けないといけない弁護士のルールがあります。

 具体的には,弁護士は,当事者の利益が相反している事件について職務を行ってはいけないというルールです(弁護士法や弁護士職務基本規程に定められています。)。複数人の間で,利益が反するような状況であるとき,弁護士として両方の味方をすることはできないというわけです。

​​  先ほど挙げたような場合でも,このルールが大きな問題になります。
​  依頼を考えている現状では,Bさん,Cさん,Dさんは同じ意見で一致していることから,Bさん,Cさん,Dさんの間では利益相反の関係は生じていないと言えそうです。しかし,遺産分割の話合い・手続はなかなか一筋縄でいくものではなく,長期化することも多いため,進んでいく途中でDさんの考えが変わってくるということも起こり得ます。

​​   ご依頼をいただいた弁護士としては,このように途中でBさん,Cさん,Dさんが対立することになった場合,すなわち利益相反状態が顕在化した場合,全員について代理をすることができなくなるため,辞任することになります。

​​  このような,利益相反状態が顕在化してしまい,全員について辞任することになってしまうリスクがあるので,Bさん,Cさん,Dさんからご依頼をいただくことは可能ではありますが,このリスクについて十分にご理解いただく必要があります。

​​  また,ご依頼いただく際には,この点について,利益相反顕在化による辞任のリスクがあること等記載した合意書を,弁護士との間で作成させていただいております。

​​  上記のような遺産分割の問題でご依頼をいただく際は,このような弁護士のルールがあるということについて,ご承知おきいただければと思います。

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