遺贈義務者と引渡義務
2021年04月18日
岡崎事務所
弁護士 安井 孝侑記
私は,岡崎市,幸田町,西尾市,安城市,碧南市,刈谷市,知立市,高浜市,豊田市を含む西三河地方の皆様から,相続のご相談を受けています。
今日は,改正された相続法に関する記事になります。
今更感ではありますが,改正まで何十年もかかったことからすれば,今回の改正法も何十年使うことになるので,何度もご紹介させていただきます。
今日は,遺贈義務者と引渡義務に関する内容になります。
正直,一般の方でここまでの内容では何を言っているか全くわからないと思われますので簡単な事例を紹介すると
遺言にて,第三者にある物を遺贈する(遺言による贈与)内容の記載があったが,その物が傷ついていた場合に,そのまま渡せばいいのでしょうか。
やはり,受け取る方からすれば,壊れていない物を受け取りたいですが,引き渡す方からすれば,自分が関与しない物まで補修しなければならなくなります。
この点について改正民法998条は以下のとおり記載されています。
(遺贈義務者の引渡義務)第九百九十八条
遺贈義務者は、遺贈の目的である物又は権利を、相続開始の時(その後に当該物又は権利について遺贈の目的として特定した場合にあっては、その特定した時)の状態で引き渡し、又は移転する義務を負う。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
改正民法について,何が改正されたかを説明すると長くなるのでここでは省きますが,改正民法は特定物・不特定物を問わず,原則として相続が開始した時の状態で引き渡せばよい,と明記されました。
つまり,遺贈義務者(相続人の方など)からみれば,遺言にて別の記載がない限りは,上記のとおり相続開始時の状態で引き渡せばよいことになります。
もちろん,相続開始時にどのような状態であったかは問題となりますし,そのままほったらかしでいいかというと,相続人の管理義務(民法918条参照)の問題もあります。
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