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弁護士コラム Column

刑事手続における保釈について

2017年05月01日
名古屋丸の内本部事務所  弁護士 勝又 敬介

 刑事事件を起こして警察に逮捕された場合、通常は捜査が終了するまで身柄を拘束(勾留といいます)されることになります。 勾留の期間は10日間から20日間というのが原則ですが、示談の成立等の諸事情で検察が起訴を見送らない限り、起訴されて刑事裁判を受けることになります。 起訴された場合、通常身柄は解放されず、引き続き刑事裁判が終了するまで勾留が継続されますが、勾留の期間は数ヶ月から数年にもに及ぶなど、非常に長期になる可能性もあります。 刑事裁判の結果がどうあれ、勾留中の長期欠勤により勤務先を解雇されてしまうなどの事態に至れば、たとえ事後的に無罪判決を勝ち取った場合でも、被疑者本人や家族らの生活に重大な影響を及ぼします。 このため、起訴前段階での刑事弁護により、不起訴処分を勝ち取ることが望ましいのですが、残念ながら起訴されてしまった場合には、長期の身柄拘束による不利益を避けるために、条件が許せば「保釈」の請求を行うことが望ましいといえます。 保釈とは、一定金額の保釈金を納めることを条件として、勾留されている被告人の身柄の拘束を解いてもらうことをいいます。保釈金は、刑事裁判の終了後に戻ってきますが、有罪判決を恐れて逃亡してしまったり、証拠隠滅行為を行ったような場合などは、保釈金は没収されてしまいます。 保釈の請求では、①権利保釈、②裁量保釈を主張することになります。 まず、①の権利保釈とは、重大な犯罪に当たらない、一定の前科がない、証拠隠滅のおそれがない、証人らに危害を加えたり脅したりするおそれがない、等の一定の要件を満たせば法律上の当然の権利として認められる保釈のことをいいます。 もっとも、事務上は証拠隠滅のおそれ等を理由に権利保釈が認められないケースが多く、実務と法律の定めが乖離している部分があります。 ②の裁量保釈は、権利保釈の要件を満たさない場合でも、さまざまな事情を考慮して保釈が相当であると裁判所が判断した場合に認められるもので、実務上は権利保釈と併せて裁量保釈を主張することが多いと思われます。 権利保釈、裁量保釈のいずれにしても、全国的にも、名古屋地方裁判所においても、保釈が認められる割合はこれまで必ずしも高くなかったのが実情でした。 しかし、近年は保釈率は一時期に比べてかなり上昇しており、当事務所が担当した事件でも保釈が認められるケースは増えています。被疑者や家族の負担の軽減、勤務先への早期復帰等の観点から、保釈について検討してみる価値は十分あるといえるでしょう。 保釈の請求は、条文上必ずしも弁護士が行う必要はありませんが、保釈請求に向けた環境調整等もありますので、信頼の置ける弁護士に相談することが望ましいでしょう。 なお、保釈金については、事案の性質、被疑者の経済力等の諸事情によるのでなんともいえませんが、目安としては200万円程度と一般的には言われていますので、参考にして下さい。 

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この記事の著者

勝又 敬介

弁護士

勝又 敬介(かつまた けいすけ)プロフィール詳細はこちら

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