生活費と特別受益
2021年03月26日
名古屋丸の内本部事務所
弁護士 長沼 寛之
相続人が、被相続人から生計の資本として贈与を受けていた場合、遺産分割の対象とされる遺産に加算されます。「生計の資本として贈与を受けていた」かという点については、贈与の金額や趣旨から総合的に判断されます。
実際の事案としては、被相続人と同居していた相続人が、被相続人から生活費を受け取っていた場合に特別受益が主張されることがあります。
生活費を受け取っていたことが間違いないとしても、それが特別受益とされるものかは判断が難しいです。
相続人であるということは、親族関係が存在しています。そして、親族には扶養義務が存在します。具体的にいえば、親には子を養う義務があるということです。この義務の範囲内の生活費の援助であれば、特別受益にはあたらないと考えられます。身体的要因等から、就労が難しい場合には、援助しなければなりません。このような援助は扶養義務の履行であって、遺産の前渡しとは評価しがたいです。
もっとも、被相続人の資力に比して、高額な援助を長期にわたって受けている場合や、自ら稼働できるにもかかわらず援助を受けていた場合など、様々な場面が想定され、ポイントとなる事情は変わってきます。
生活費の援助など、気になる事情がある場合は、一度弁護士に相談されることをお勧めいたします。