「議決権行使助言会社」ってなあに?
2007年06月06日
弁護士 上野 精
「議決権行使助言会社」ってなあに?
新会社法が施行され1年が経過した。いわゆる経済のグローバル化を背景に外資系?ファンドによる企業買収の話題がマスコミを賑わしている。当地においても5月19日付中日新聞に、ブルドックソースを相手に株式公開買い付け(TOB)を仕掛けた米系投資ファンドのスティールに対し、ブルドックが「TOB反対表明へ」との見出しのもとに、「スティール投資先企業総会前に駆け込み・防衛策続々と導入」と題する特集?記事が組まれていた。
スティールといえば、これに先立ちマスコミを賑わしていた愛飲家なら知らぬもののないサッポロビールの経営母体サッポロHDとの買収攻防戦の記事を思い起こされた人も多いのではないだろうか。
マスコミの伝えるところによれば、両者の買収を巡る攻防戦の「天王山」と目すべきものは、3月29日に東京の恵比寿で開かれたサッポロHDの株主総会であり、ここで会社側が提案の新買収防衛策「第7号議案」が可決承認されたことで、サッポロは差し迫っていた買収の危機を乗り越えたとのことである。 ちなみに、ここでとられた買収防衛策は、上場会社の多くが採用しているいわゆる「事前警告型」に属するもので、物の本によれば「議決権の20%以上の株式取得を目指す買収者に対して、その目的や事業計画などの説明を求める。その上でその買収が株主全体の利益に反すると判断した場合には、新株予約権を発行して買収者の持ち株比率を引き下げ、買収を困難にする手法である。」とのことである。
とうぜんのことながら、サッポロHDの総会では、会社側提案と株主側提案を巡っての攻防戦すなわち「委任状」の争奪戦となる訳で、スティールは議決権のある全株主約3万5000人に対し、ウェブサイトに「新たな事前警告型買収防衛策導入反対のお願い」と題する書面を掲載し、議案に反対若しくは委任状の自社への送付を呼びかけたが功を奏さず、会社側提案が可決承認される結果となったわけである。ここまでは、よくある話であるが、ここで注目されるのは、この委任状争奪戦にアメリカの「議決権行使助言会社」3社が参入し、それぞれの立場から2社が会社側提案に「反対」1社が「賛成」の立場からいわゆる機関投資家に対し助言を行ったと伝えられる点である。
本年5月に三角合併が容認され、今後わが国の企業に対する買収を巡る紛争が多発するのではないかといわれる昨今、「議決権行使助言会社」が「モノ言う株主」らにとり「頼りとするに足りるアドバイザー」なのか否か、その活動の実態と合わせ注目して行くべきものと思われる。
なお、この問題に関心のある向きには、第一法規刊、「会社法務A2Z」創刊号28ないし31頁記載の記事の一読をお勧めする。
以上