代表取締役の予選はやはり限定的なのか…
2018年06月01日
名古屋丸の内本部事務所
【ある日の株式会社愛知総合法務事務所】
取 締 役 萩野、戸松、日下部、深谷
代表取締役 萩野
萩野
「童顔と言われながらも四捨五入でアラサーと言える最後の誕生日を迎えてしまったなぁ。来年の春まで任期は残っているけれど、再来月の8月1日付で取締役と代表取締役を辞任して、同日付で成長めざましい深谷さんに代表取締役に就任してもらって後を任せようかな。」
深谷
「それはいいですね!8月1日に4名全員集まるのは難しそうですが、7月15日は予定が合うので、取締役会を開催して萩野さんに8月1日をもって辞任する旨の書面を提出して頂き、私を8月1日付で代表取締役に選任する内容で予選決議を致しましょうか!!!」
萩野
「それで進めてくれたまえ。 …しかしいつもにも増して手際がいい気がするのが、ちょっとさみしいよ。」
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代表取締役の予選が認められるためには、予選時(7月15日)と効力発生時(8月1日)とで、
①取締役の役員構成が同じ
かつ
②間が空きすぎない
という要件があります。
①の趣旨としては、メンバー構成が決議での意思決定に影響するためと考えられます。
上記事案ですと、メンバーは次の通りです。
7月15日の取締役…萩野、戸松、日下部、深谷
8月 1日の取締役…同上
※「1日付で辞任」ではなく「1日をもって」なので、1日の0時ではなく24時に辞
任の効力発生。のはず。 登記研究281号69頁
「メンバーは一緒だし期間も短いからできるな、よしよし」と思いましたが…
【結論:予選不可】
辞任の効力は発生していないが、萩野が辞めることは分かっているので、実質8月1日時点での取締役は戸松、日下部、深谷。よってメンバー不一致。
根拠資料 総務・法務担当者のための会社法入門43頁
『4月1日に取締役でなくなる○が取締役でいる3月中の代表取締役の予選は認められないとするのが登記実務の大勢』
うーん… 先例ができた趣旨からするとできると解釈したのですが…
会社運営上不便ですね。
結局、株主総会において取締役を予選した上、改選前の取締役が新代表取締役を予選することにつき、株主総会において取締役が全員再選されて取締役に変動を生じない場合という限定的な場面でしか使えず、書面決議でやるしかなさそうです。
商業登記はやはり難しいです~試験勉強が会社法施行後でよかったとつくづく思う今日この頃でした。
☆参照☆
登記研究221号、529号、701号
別冊ジュリスト124商業登記先例判例百選111頁
実務相談株式会社法3 45頁