離婚届の証人は必要?書かないとどうなる?弁護士が解説
はじめに
結論としては、離婚届に証人は必要です!しかも、証人は2人必要です!
「これから離婚届を書く予定だけど、証人って何?誰かに頼んだら迷惑をかけちゃうかな?」とか、「友達に離婚届の証人を頼まれたけど、これって名前を書いたら何か責任負わされるのかな?」と思っている方もいるかと思います。
そこで、離婚届の証人とはどういうものなのか弁護士が詳しくご説明します。これから離婚届の証人を頼もうと思っている方も、離婚届の証人を頼まれた方も、是非最後までご覧ください!
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離婚届の証人とは
離婚届の右側を見ると「証人」という欄があります。
離婚届を記入するときは、離婚する夫婦とは別に、2人の人が署名・押印しなければならないのです。この署名・押印は必ず本人がする必要があります。署名は、黒のペンやボールペン等の消えないペンで書いてください。印鑑は、認印で十分ですが、シャチハタは使用できません。
このブログを見ている方は、“既に結婚をしており現在は離婚を検討している“という方が多いかと思いますが、思い出して下さい…。
婚姻届を書いた時にも証人が2人必要でしたね?
そうなんです、離婚届を書く時にも証人が2人要るんです。そもそも、結婚したり離婚をするのになぜ第三者の署名・押印が必要なのでしょうか?次にその理由を説明します!
離婚届の証人が2人必要な理由
離婚届の提出に関するルールは、婚姻届のルールを準用することになっています。では、なぜ婚姻届には証人が2人も必要なのでしょうか。これはちょっと詳しく説明します!
(婚姻の規定の準用)
第七百六十四条 第七百三十八条、第七百三十九条及び第七百四十七条の規定は、協議上の離婚について準用する。
(婚姻の届出)
第七百三十九条
1 婚姻は、戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。
2 前項の届出は、当事者双方及び成年の証人二人以上が署名した書面で、又はこれらの者から口頭で、しなければならない。
民法739条2項では、婚姻届には2人の証人が必要とされており、同法764条により離婚届にも準用されています。
婚姻届に2人の証人が必要とした趣旨は、当事者に婚姻の意思があることを確認するためと言われていますので、離婚届だと当事者に離婚の意思があることを確認するためと言えます。
しかし、私が司法試験の勉強していて、この条文の趣旨を見た時に「???」となりました…。
趣旨があまりにも非論理的であり、当時大学生だった私は「こんな理由なら証人なんて要らないだろ!」、「証人がいれば慎重になるとか言うけど、現実は結婚も離婚もいっぱい起きているじゃないか!」等と文句ばかりいっていました。
正直今もそう思っています(笑)。
学者が民法の条文を解説している本を読んでも、「実際においてどれほどの意義を持つかは疑問であろう」と書いてありました(青山・有地『新版注釈民法(21)親族⑴』 有斐閣 2010年)。
民法が明治時代に作られているので、恐らく明治時代の価値観とか常識が残っちゃってるんですね。民法も、男女差別的な規定が削除されていたり、判例の影響によって改正されたりした条文もあるのですが、この証人に関する条文はしぶとく生き残っています。
離婚届の証人が2人必要な理由は、理論的な裏付けや合理性がある訳ではないので、あまり意味のない条文だと個人的には思っています。
しかし、私の知人が「友達が結婚する時に“証人の欄に名前を書いて”と言われることは親友と認められたということだから嬉しいんだ!」と言っていたのを聞き、「そんなロマンチックな考え方もできるのか~。」と感心したことがあります。
この解釈を離婚届に当てはめるならば、証人とは「夫婦が分かれて、別々の人生を歩いていくのを見届ける役割である」という読み方もできるのかなあと思ったりしています。
証人は誰に頼むべきか
証人は成人であれば誰でもなることができます。(※民法が改正されて、令和4年4月1日以降は成人の年齢が18歳に引き下げられています。)自分のお子さんでもオッケーです。本当に誰でも良いのです。その辺を歩いている人に話しかけて、「離婚届に署名してくれませんか?」と頼んだって何にも問題ありません(完全にヤバい人ですが…。)。
実際には親族や知人に頼むことが多いです。離婚はプライベートなことなので、気心が知れている人に頼むのが一番良いでしょう。
当事者が代筆はできる?
当事者による代筆はできません!
下記のとおり、当事者が代筆してしまうと犯罪になる恐れがあります。なので、離婚届を作成するときには大人が4人も必要な訳です。結構大変な事ですよね…。
勝手に書いた場合どうなる?
証人の欄に勝手に人に名前を書いたり、人の印鑑で押印したりすると有印私文書偽造罪及び同行使罪(刑法159条1項、同法161条1項)に当たる恐れがあります。くれぐれも離婚届の証人欄を偽造することはないようにしてください。
証人が不要になる場合は?
証人が2人必要なのは、協議離婚だけです。
離婚に証人が必要な趣旨は、証人によって離婚意思を確認するためですので、裁判所が関与する離婚は裁判所において夫婦が離婚しようとする意思が明らかであることから、証人は不要という訳です。
なお、離婚の相談を受けるときに、相談者の方が離婚をする方法が4種類あるということを知らないことが多いので、その種類を説明しておきます。実際の離婚では、協議離婚が圧倒的大多数ですので、証人が登場する場面は多いかと思います。
⑴ 協議離婚
裁判所を介さずに、夫婦間で離婚を決めること。離婚の中では一番多い。
⑵ 調停離婚
家庭裁判所に申立てをして、調停委員が間に入りながら夫婦で合意をして離婚すること。
⑶ 審判離婚
⑵の調停が不調となり、家庭裁判所が相当と認めるときに、調停委員の当事者の衡平を考慮し、一切の事情を考慮して裁判所が離婚を決めること。実務ではあまり見ない。
⑷ 裁判離婚
多くの場合、調停での離婚が成立しなかったときには離婚の裁判を提起する。裁判所が770条1項各号の離婚事由に該当する判断した場合には、裁判所が離婚を決める。
証人を頼む相手がいない場合はどうしたらいいか
上述したとおり、成人していれば誰に証人を頼んでも良いのですが、よくある問題としては「離婚を知られても良い人が周りにいない」ことです。
証人を頼む相手がいないケースとして、お子さんのいないご高齢の夫婦の離婚が挙げられます。親族や知人が次々と亡くなり、離婚を話せるほどの親しい関係の人も周りにいないので、証人を頼むのに困ってしまうというケースです。
その場合には、お近くの弁護士に依頼するのが一番安心かと思います。その際に、離婚に関する条件等も弁護士に相談すると一石二鳥ですね!
証人欄の部分を書かないとどうなるのか
(離婚の届出の受理)
第七百六十五条 離婚の届出は、その離婚が前条において準用する第七百三十九条第二項の規定及び第八百十九条第一項の規定その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない。
民法が規定するように、離婚届に証人欄の部分を書かなければ役所は離婚届を受理してくれません。証人は必須ですので、どうしても証人を頼める人がいなのであれば、弁護士に依頼することをお勧めします。
離婚届の証人代行サービスなどのリスクについて
証人を頼む相手がいない場合には弁護士に依頼することを提案しましたが、インターネットで検索すると証人代行サービスがいくつか出てきます。誰でも良いのなら、証人代行サービスを利用すれば良いのではないかと思うかもしれません。
この点につき、弁護士は、弁護士法や弁護士職務倫理規定に基づき守秘義務を負っており、依頼者から聞いた情報を正当な理由なく外部に公開することは禁じられています。
しかし、証人代行サービスのような業者はこのような規制がないので安易に個人情報を漏らしてしまう恐れがあります。値段を比較すると証人代行サービスの方が安いので、「値段が安い方でいいや!」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、離婚というプライバシーの高い情報が漏れてしまうのはリスクがあるといえるでしょう。
証人代行サービスよりも弁護士の方が費用は高いかもしれませんが、その分セキュリティも高いのでぜひ検討してみてください。
離婚届の証人を頼まれた場合リスクはあるのか
離婚届の証人が、離婚に関して法的な責任を負うことはありません。証人は、離婚を見届けるだけで、何かを保証する訳ではないので安心してください!
協議離婚に関して弁護士へ相談するメリット
離婚のうち、約90%は協議離婚です。世間では夫婦間の話し合いだけで離婚していることが圧倒的に多いため、協議離婚をする際に弁護士に相談することを考えている人は少ないかもしれません。
しかし、ちょっと注意して欲しいことがあります。
離婚の相談で、「財産分与請求は離婚成立から2年以内にしなければいけないのにそれを知らずに離婚してしまった」、「養育費の相場は7万円くらいなのに、これまで毎月十数万円渡していた」といった事案を見かけることがあります。
これは、法律の知識が無いために知らず知らずのうちに不利な条件で離婚をしてしまったケースです。
調停や裁判の離婚では弁護士に依頼していることが多いのでこういうことはあまりないのですが、協議離婚だと弁護士に相談せずに自分たちで決めた離婚の条件が、法律や裁判所で認められる内容よりも不利になってしまうということがあります。
協議離婚の場合でも、一度弁護士に相談して離婚の条件について聞いておくことをお勧めします。もしかしたら、思わぬ落とし穴があるかもしれませんので…。
愛知総合法律事務所では、初回相談を無料で実施していますので、お気軽に相談してみてください。