触ってないのに傷害罪?
2017年12月25日
岐阜大垣事務所 弁護士 佐藤 康平
今般、各界での傷害事件をはじめとして、傷害事件が報道される機会が多くなっていると感じております。今回は、傷害事件における「傷害」について、ご説明をさせて頂きたいと思います。
さて、傷害罪は「人の身体を傷害したものは、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」(刑法204条)と規定されており、「人の身体を傷害した」場合に成立する犯罪です。殴って怪我をさせるなど、暴行により、怪我をさせた場合が典型的です。
しかし、暴行によらない場合であっても、傷害罪が成立する場合があります。
隣人トラブルにて、連日連夜、ラジオの音声やアラーム音を大音量で鳴らし続けた事件において、裁判所は、「傷害罪の実行行為は、人の生理的機能を害する現実的可能性があると社会通念上評価される行為であって、そのような生理的機能を害する手段については限定がなく、物理的有形力の行使のみならず無形的方法によることも含むと解される」(奈良地判平成16年4月9日)としており、最高裁判所も、当該判断を是認しております。
上記を読んでも、よくわからないと思いますので、説明をさせて頂きます。
要するに、裁判所は、傷害罪は人の生理的機能を害する危険性があると評価できるものであればよく(生理的機能を害するとは、大まかにいうと、怪我をさせたり病気にさせることです。)、必ずしも、直接殴ったり切りつけたりする必要はないということです。
上記事件では、ラジオの音声やアラーム音を大音量で鳴らされ続けたことにより、被害者が、慢性頭痛症、睡眠障害、耳鳴り症に罹患してしまったために、傷害罪に該当すると認定されています。
上記のように、刑法犯は、意外と、私達が想像していない形で成立することもあります。
自分や身近な人が傷害罪の嫌疑をかけられていたり、身柄拘束をされてしまったりした際には、速やかに、弁護士に相談をすることをおすすめいたします。