モラハラと離婚について世田谷の弁護士が解説
2022年11月17日
東京自由が丘事務所
近年、モラハラやDVに関する離婚相談は増加の傾向にありますが、令和元年度の司法統計では女性が離婚を申し立てた理由に「精神的に虐待する」が3位に。離婚に踏み切れていない方も含めると、モラハラで苦しんでいる方が非常に多くいらっしゃる事がわかります。
特に、東京、大阪、愛知など人口の多い地域は離婚件数も多いため、モラハラ被害も多いのではないでしょうか。
今回は「モラルハラスメントによる離婚相談」について、東京世田谷区の自由が丘事務所所長 田村弁護士が解説します。
モラハラ(モラルハラスメント)と離婚相談
世田谷区自由が丘事務所 所長弁護士田村祐希子です。
最近、モラハラ(モラルハラスメント)に関連したご相談を受けることがあります。
モラルハラスメントとは、言葉や態度、身振りや文書などによって、相手の人格や尊厳を傷つけたり、肉体的、精神的に傷を負わせることをいいます。
夫婦、家族、恋人の間では、気の許せる仲だからこそ、素直な感情をぶつけたり、時には、自分の弱い部分をさらけ出したりできることがあります。
しかし、夫婦、家族、恋人の間であっても、相手の人格や尊厳を傷つけることが許されるわけではありません。夫婦間でモラハラの被害にあった場合、離婚を請求したり、慰謝料を請求したりすることで、被害からの解放や被害の一部回復を図ることが考えられます。
しかし、この場合、以下の問題をクリアする必要があります。
モラハラの事実を証明できるか
離婚を請求するにしろ、慰謝料を請求するにしろ、モラハラを理由とする場合には、モラハラの被害を受けている事実を証明する必要があります。
暴力行為であれば、外傷が残ることが多いので、医者の診断書から被害をある程度証明することができます。
しかし、人格や尊厳に対する危害、精神的な傷などは、他人にわかってもらうのが難しいというのが実情です。
モラハラをする人が、他人を精神的に傷つけたことを、自ら認める可能性は低いと考えられます。
調停や裁判等の法的な手続きに入った場合に、モラハラの立証の難しさが障害になることが考えられます。
モラハラが離婚の慰謝料の根拠といえるか
モラハラの事実があったとしても、ただちに離婚や慰謝料の請求が認められる訳ではありません。法律上、モラハラがあれば離婚できる、という規定はありません。
裁判になると、モラハラが「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」にあたるが問題となります。モラハラによって、夫婦関係が破綻していると判断されなければ、離婚を認容する判決を出してもらうことは難しいと思われます。単なる性格の不一致や、夫婦間のすれ違いとしか判断してもらえなければ、離婚を認めてもらうのは難しいです。
また、慰謝料請求の場面でも、モラハラによる被害が重大と判断されなければ、請求が認められない可能性もあります。
上記のようにモラハラからの解放は難しい問題を含むのが事実です。
しかし弁護士とともにモラハラと向き合うことで、立証の困難性や法的評価の限界を乗り越える切り口が見つかることもあります。
また、モラハラの被害は、加害者のみならず、被害者自身が気づいていないことにも問題の根深さがあります。
「無視されたり、怒られたりするのは自分がだめだからなんだ」「自分は相手を敬わなければならない、自分は耐えなければならない」
そんな風に自分を卑下してしまい、誰かに悩みを打ち明けることに後ろめたさを感じてしまっている場合も少なくありません。
まずは、相手の行動がモラハラかなと感じたら、それを示すメールやLINEの画面等お手持ちの資料をご持参の上ご相談ください。離婚・男女問題について、お一人で悩まず是非ご相談下さい。ご一緒に解決方法を見つけていきましょう。
離婚・モラハラについては弁護士までお気軽にご相談下さい。詳しくはこちらから。
どこからがモラハラ?
つづいて「どこからがモラハラ?」といういくつかのケースについて、考えてみたいと思います。
「パートナーが家事をしない」という場合
例えば、パートナーが自宅内であなたの部屋だけ掃除しない、あるいはパートナーが料理はするが洗濯はしないという場合、パートナーとあなたの家事の役割分担の問題ともいえますので、パートナーが家事をしないというだけではモラハラということはできません。
モラハラとは、「相手の人格や尊厳を傷つけ、肉体的、精神的に傷を負わせること」をいいますので、
例えば、十分な家庭収入があるにもかかわらず、パートナーがあなたに対して食事代に欠く程度の小遣いしか渡さず、さらに、あなたの食事も作らないため、あなたが生活に困窮している場合には、モラハラにあたる可能性があります。
「子どもに対して過度に教育熱心である」という場合
パートナーが子供に教育熱心になるあまりに様々習い事をさせる等して、子どもに窮屈な思いを強いている場合、子の福祉の観点から問題となる可能性がありますただ、それはあくまで子どもとパートナーとの間の問題であり、あなたより子どもを優先しているというだけでは、モラハラにあたるとはいえません。
しかし、パートナーが子どもに対し、「勉強しないとお父さんみたいになるよ」等の父親を侮辱する発言を繰り返し、子どもを巻き込んで、家庭内でのあなたの居場所をなくすような行為に及んでいる場合には、モラハラにあたる可能性があります。
「あなたの仕事や収入について、過剰に批判する」という場合
パートナーが、あなたの収入について、パートナーの親や友人などと比較する場合、それがパートナーのあなたに対する「あなたも負けずに頑張って」という励ましの気持ちによるものか、あなたを「あなたは劣っている人間だ」と蔑む気持ちによるものか、容易に判断できないため、日常の夫婦の関係性等を含めた考慮が必要となります。
モラルハラスメントという言葉が盛んに使われるようになったのは、それほど前のことではありません。
しかし、モラハラという言葉がちょっとした流行語のようになり、自分の理想と異なる相手の行動を、すぐに「モラハラ」に結びつけてしまう風潮が散見されます。
パートナーへの思いやりを少し欠いてしまった行動全てを「モラハラ」と断定し、相手を非難するばかりでは、相手との関係改善を先延ばしにすることにしかなりません。
もっとも、夫婦間のモラハラは、家庭内の閉鎖的空間で行われるため、被害者が自分の中に抱え込んでしまうことが多いのも事実です。
相手の行動がモラハラかな?と感じたら、お一人で悩まずに是非一度ご相談下さい。