業務遂行性と業務起因性
2019年08月21日
社会保険労務士 原田 聡
業務上の事由による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して保険給付される労災保険ですが、労災から保険給付を受けるには、ただ単に負傷しただけでは、労災保険の保険給付はありません。「業務上」の事由による負傷でなければなりません。
この「業務上」とは、この労働災害は、①仕事中に②仕事が原因で発生という2つの条件を満たしていないといけません。
「業務遂行性」と「業務起因性」と言いますが、仕事中に発生した負傷といっても、職場内で休憩をしている場合も含め、事業主の支配下かつ管理下にあると認められれば「業務遂行性」があると判断されます。
また、仕事が原因ですが、台風・地震等での負傷等の場合、いつ災害が起きてもおかしくない状況で仕事をしていたと考え、業務災害として認められる可能性が高いです。
このように、労災保険の保険給付が受けることができるかどうかは、「業務遂行性」と「業務起因性」の2つの基準で判断をしていきますが、労災かどうかの判断が難しい場合も多くあります。
たとえば、仕事中に「腰痛」が発生した場合。この腰痛は、仕事のみが原因なのか既に持病としてあったものが発症したものかどうか。業務で商品運搬中にぎっくり腰になったとしても、そもそも持病として腰痛があれば労災保険の保険給付を受けることはできません。
また、パワハラ等による「うつ病」も判断が難しいです。精神疾患の場合、業務による心理的負荷、業務以外の心理的負荷、個体的要因から精神疾患の発症は、仕事による強いストレスによると判断される必要があります。
一つ一つの事案に対して、労災かどうかの判断をするのは、労働基準監督署になります。お勤めの会社の担当者が判定を下すわけでもなく、労災の申請をしてみないとわからないものもあります。
労災保険でないとすると、健康保険等で窓口で3割負担することになりますし、最初に健康保険を使い、あとから労災保険の適用となると、健康保険で負担した分を返還してもらう手続きが必要となります。