就業規則作成の費用と注意するポイント【社労士解説】
2022年11月29日
名古屋丸の内本部事務所
社労士 大内 直子
就業規則作成費用の相場について
以前は社会保険労務士の業務にかかる報酬は、各都道府県の社会保険労務士会が定める報酬基準によることとされていました。ところが社会保険労務士法の改正により現在では社会保険労務士の報酬は自由化され、業務の受け方や報酬設定等はそれぞれの事務所によって異なることになりました。
就業規則の報酬に関していえば事務所によって2万円~数十万円までとかなり幅があるようですが、概ね20万円前後の設定が多い印象です。
これは以前の報酬基準に近い金額設定をしていることが理由と考えられます。
作成費用に差がある理由について
就業規則の作成過程は大まかに次の通りです。
① 聞き取り(就業実態等把握)
② 確認・検討
③ 作成
④ 説明・最終確認
⑤ 行政への届出
上記記載の通り、作成には会社との打合せ・関係法令の確認作業・その会社にとってベストな規定の検討・行政への就業規則等の届出といった過程の他、時には会社の要望と法令のバランスを考えた提案を行うこともあります。
就業規則を1本作成するにも多くの過程を経ることをお分かりいただけるかと思います。
一般的に就業規則の作成費用はこの過程にかかる作業量と時間等を鑑みて設定されるため、「何(就業規則のみ?規定数はどのくらい?その他規程も作成する?)を」「いつまでに」「どこまで行うか」が費用に違いが出る大きな理由と考えます。
そうであるとすると、安いからどうで高いからどう・・などとは一概には言えないのかもしれません。
就業規則作成における注意点
簡単にいうと、就業規則は会社のルールブックです。
就業規則を定めることで労働条件の統一的な管理や職場規律を守ることが可能になります。
ご承知の通り常時10名以上の労働者を雇用する使用者は就業規則を作成し行政に届け出る義務があるのですが、就業規則作成は「作成すればそれでよし!」というものではなく、法律で定められた一定の内容を満たし、かつそれが適切な方法で労働者に周知されなければなりません。
就業規則作成の際に注意すべき事柄は特に次の3点であると考えます。
① 法律で決められた記載内容が明記されていること
② 定めた規定が実態に合う適切な内容になっていること
③ 就業規則を適用するための手順を守っていること
① 法律で決められた記載内容が明記されていること
就業規則に記載する内容には、始業終業の時刻、休憩休日休暇に関する定め、賃金や退職に関する定めなど必ず記載しなければならない“絶対的必要記載事項”と会社でルール化する場合には記載しなければならない“相対的必要記載事項”があります。(労基法89条)
まずは最低限、これらの内容が記載されているかの確認が必要です。また会社にとって必要な定めるべきルールがしっかりと定められていることで、労働者との無用なトラブルを未然に防ぐことが可能になります。是非ご確認下さい。
② 定めた規定が実態に合う適切な内容になっていること
先に記載の通り、就業規則には記載しなければならない事柄が法律で定められていますが、ここで重要なのは、その記載内容が会社の実態に合う適切な内容であるか否かということです。
実態に合わない規定は万一労働者との間でトラブルが生じた場合に無効とされてしまうリスクがあり、せっかく定めた規定を使うことができない上、会社にとって思わぬ不利益が生じることも考えられます。
作成した就業規則は適宜見直しが必要です。(なお見直しにもルールがありますので、その際は専門家に相談しながら進めることがお勧めです。)
③ 就業規則を適用するための手順を守っていること
就業規則は作成後、労働者代表などから意見聴取し、行政に労働者の意見書と共に提出(労基法第90条)、その後「周知」(労基法第106条)して初めて有効なものとなります。
これらの過程の全てが守られていなければ、せっかく定めた就業規則も無効とされる可能性がありますので、就業規則作成後は運用まで、正しい手順を踏むことが必要です。意見聴取などついつい面倒に感じてしまいますが、労働者代表が正しく選出されているかなども今一度ご確認下さい。