負担付「相続させる」旨の遺言について【令和2年6月11日仙台高等裁判所決定】
2022年06月20日
名古屋丸の内本部事務所
負担付「相続させる」旨の遺言についての高等裁判所決定の内容を紹介します。
①一切の財産を長男に相続させること、②相続の負担として長男は二男の生活を援助することが、遺言者(父親)の公正証書遺言に記載されていました。
父親は、生前、二男に対し、月額3万円の生活費の援助をしていました。父親の死後、長男は、二男に対し、2カ月間、月額3万円の送金をしましたが、その後、送金を止めてしまいました。このため、二男は、長男に対し、負担付「相続させる」旨の遺言の取消を家庭裁判所に求めました。
家庭裁判所は、負担付「相続させる」旨の遺言についても、負担付遺贈に係る遺言の取消の民法1027条が類推適用されるとした上で、
①「二男の生活を援助する」ことの内容が抽象的内容であること、②長男は二男の生活状況などを十分に把握できなかったこと、③長男は経済的援助の支払を拒絶していたわけではないこと(一定の経済的援助の支払が命じられた場合には支払う意思があることを表明していたこと)、④父親が遺言を作成した理由は二男が統合失調症であったこともあり財産管理能力に疑念があったこと、
などの理由から、長男が現時点で負担を履行していないことは長男の責めに帰することができないやむを得ない事由があるとして、二男の申立を認めませんでした。