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弁護士コラム Column

相続に関する重要な判例変更

2014年06月17日
名古屋丸の内本部事務所  弁護士 勝又 敬介

 既にネット上の情報や、テレビ・新聞等でご存じの方が多いと思いますが、昨年12月5日に,民法の一部を改正する法律が成立し,嫡出でない子の相続分が嫡出子の相続分と同等になりました。

 嫡出子というのは、法律上の婚姻関係にある男女の間に生まれた子どものことをいいます。これに対して嫡出でない子(「非嫡出子」といいます)とは、法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子供のことをいいます。

 これまでは、民法900条第4号ただし書きにより、非嫡出子の相続分は嫡出子の半分とされており、同じ親から生まれているのに(父母のどちらかは異なることが多いのですが)不平等であり、いわゆる法の下の平等を定めた憲法14条に反するという批判は強く、この規定の合憲性は古くから争われてきました。最高裁はこれまで合憲の判断を繰り返しており、その根拠は法律婚の保護にあるなどと言われてきましたが、昨今の家族観に関する時代の変化等を踏まえれば、遅くとも平成13年7月当時にはこの規定は違憲になっていた、として平成25年9月4日についに違憲判決を下したのです。

 この判決を受けて、法務省は新しい法律を成立させ、平成25年9月5日以降に発生した相続については、民法900条4号ただし書きは適用されないことになりました。「相続の発生」というと聞き慣れませんが、被相続人(相続の対象となる方)が亡くなられたことをいいます。

 また、この最高裁判決によると、平成13年7月から平成25年9月4日までの間に開始した相続については,「遅くとも成13年7月当時にはこの規定は違憲になっていた」ことになります。この場合、違憲な法律を適用して相続分を定めることはできない、という考え方に従い、平成13年7月以降に発生した相続からは、民法900条4号ただし書きは適用されないことになります。

 これを前提にすると、平成13年から現在までに行われた遺産分割で、民法900条4号ただし書きを前提に行われたものは、全て内容に誤りがあったとして無効にもなりかねません。ですが、10年以上もさかのぼって、過去に行われた遺産分割の効力を否定することになると、非常に大きな混乱が起こってしまいます。(相続した土地に分譲マンションが建って、たくさんの人がマンションを買った後で、もしも「相続が無効になったからマンションの売買も無効です。出て行きなさい」なんて言われたら大変ですよね。)

 そこで、最高裁はこの判決中で、「この判決は、この規定を前提として行われた遺産分割の審判や遺産分割の協議により確定的なものとなった法律関係には影響しない」という考え方も示しました。

 この判決の評価自体は様々でしょうが、いずれにしても、この判決ほどではないにしても、相続の分野においては実務に非常に大きな影響を与える重要な判例が日々積み重ねられています。相続のことで気になることがあったら、専門家である弁護士に一度相談されてみると、目から鱗、というような話が聞けるかもしれません。

                            名古屋丸の内本部事務所  弁護士 勝又 敬介

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