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弁護士コラム Column

就業規則をテンプレートで作る時のリスクを社労士が解説

2024年08月08日
名古屋丸の内本部事務所  社労士 大内 直子

就業規則をテンプレートで作るメリットとデメリット

就業規則のテンプレートは、インターネットで検索すれば行政が出しているものから個人が出しているものまで、様々な書式を簡単にダウンロードすることができます。

​​ テンプレートのメリットは、基本的な内容が網羅されているなど、誰でも就業規則を簡単に作成できるよう工夫されているものも多く、大変便利な作成ツールです。

​デメリットは、その多くは汎用的に作られているため、自社のルールや特有の実情に合っていないなど、テンプレートの内容をそのまま使用してしまうと、いざトラブルが起きた際に対処できないことも考えられます。

​​ またテンプレートの中には現状の法律に合致していないものもあるため、注意が必要です。
​​テンプレートの就業規則は利便性が高いものの、使用の際は十分ご注意下さい。

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就業規則に必ず記載すべき事項とその理由

絶対的必要明示事項は内容ごとに分類すると以下の3つに大別されます。

①労働時間に関する事項 

  1. ・始業及び終業の時刻
  2. ・休憩時間 (休憩の長さや開始時間など) 
  3. ・休日及び休暇 (具体的な休日の曜日や長期連休の休暇の規定など) 
  4. ・交代制の場合の就業時転換に関する事項 (シフト制など労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合の其々の勤務における始業・終業時刻や適用日など)

②賃金に関する事項 

  1. ・賃金の決定 
  2. ・賃金の計算及び支払方法
  3. ・賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項  ※賃金を決定する職歴や等級などの賃金体系や計算・支払い方法
  4. ・支払い方法、昇給に関すること

③退職に関する事項 

​ ・退職の事由や手続き、解雇の事由など従業員の退職に関わる内容すべて

​​※退職や解雇はトラブルが起きやすいため、退職するにはどういう手続きを踏む必要があるのか、解雇はどういう場合に該当するのかなどできる限り具体的に記載することが求められます。

​​なお、絶対的必要記載事項が一つでも記載されていない場合、30万円以下の罰金が科される恐れがあります。(労基法120条1項) 就業規則作成の際には事前に『絶対的必要記載事項』の内容をご確認の上、その全てを記載する必要があります。

就業規則のテンプレートでは対応できない労働条件や規定の例

ここではテンプレートの就業規則では、対応できない労働条件や規定例について紹介します。

​​ 多くの会社には正社員、アルバイト、契約社員や派遣社員など様々な雇用形態の従業員がいますが、それぞれの雇用形態にあった内容で就業規則を作成しなければ、後々トラブルに発展する恐れがあります。​​

​​テンプレートには当てはまらない従業員がいることも忘れず、 個々の従業員の雇用形態と労働条件に気を配りながら、規定の内容を検討しましょう。 ​​

​​テンプレートに当てはまらない従業員とはテレワークにより通常の勤務時間とは異なる働き方をしている場合や事務所にいることが少なく、直行直帰など労働時間が算定しがたい従業員、変形労働時間制を用いて勤務している従業員などが挙げられます。

テンプレート使用が適さない業種や企業の特徴

テンプレートは就業規則における基本的な内容が記されているものです。

​​そのため会社独自のルールや、従業員によって様々な労働条件があるような会社には適さないものです。

​​ ​​また製造業や建設業など事故が多い業種においては、事故が起こらないようなルール作りに気を配るなど、会社独自の規則の作成が不可欠です。 ​​ただ、細かいルールの作成には大変な労力と困難を伴います。

​​労働関係法令の専門家である社会保険労務士に相談し、会社に合致した就業規則にしてもらうことがお勧めです。 ​​

​​愛知総合法律事務所では企業にあわせた就業規則の作成も承っております。まずはお気軽ご相談ください。

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自分で就業規則を作成する場合の注意点

就業規則は会社のルールブックです。そのため、経営者が自身で作成することはもちろん可能です。 しかし、就業規則には様々な労働関係法令が絡んでくるため、それらの法律をしっかり理解していなければ作成は困難を極めます。

​​また専門的な知識が不十分な状態で就業規則を作成すると、適法でない規定を作成してしまうなど、結果的に経営リスクの増加につながることも考えられます。

会社で就業規則を作成する場合の注意点は以下の通りです。

  1. ・テンプレートやネットで出回っているものは参考程度に留めておくこと
  2. ・他社の就業規則を使用しないこと(その会社の独自のルール等が多いため引用すべきではない)
  3. ・現行法令に合致しているか適宜確認しながら作成すること

就業規則の遅刻や早退、欠勤、退職についての書き方

就業規則作成の際によく考えなければならない規則として、「従業員の遅刻や欠勤、早退」があります。ここで書き方の例としてご紹介します。

まず遅刻・早退・欠勤等に係る事項を就業規則に定めていなければ、賃金から未就労分の賃金を控除することができません。(就業規則等に定めがないにも関わらず経営者の勝手な判断で賃金を控除すると、法律違反になる可能性があります。)  

​​そうならないためにも、就業規則に

​ ①遅刻や早退、欠勤をした場合はいつまでに、誰に、どのような手段で届け出るのか
​ ②どのような計算方法によって賃金から控除できるのか等


​​ を記載しておくことが求められます。

遅刻・早退・欠勤の書き方例

(遅刻・早退・欠勤)

​​ 第〇条 
​従業員は、遅刻、早退、もしくは欠勤する場合は、事前に会社に申し出た上で、上長の承認を得なければならない。ただしやむを得ない理由で事前に申し出ることができなかった場合は、事後速やかに上長に届出をし、その承認を得なければならない。

※ここで重要なのはただ届け出るだけでなく、しっかり承認を得なければ認められない旨を記載しておくことが大切です。

(遅刻・早退又は欠勤の扱い)

​​ 第〇条 
​​1 遅刻・早退又は欠勤を行った場合は、当該日数又は時間分の賃金を控除する。
​ 2 前項の控除すべき賃金額の計算方法は以下の通りとする。
​ 【欠  勤】(基本給+各種手当)÷1ヵ月の平均所定労働日数×欠勤日数
​ 【遅刻早退】(基本給+各種手当)÷1ヵ月の平均所定労働時間数×遅刻早退時間

就業規則を定期的に見直す必要性

就業規則は作って終わりではありません。職場内の環境や従業員の働き方の変更、法改正が行われた場合には、それらに対応できるよう、就業規則は定期的に見直す必要があります。

​​ 最近では、新型コロナウイルスの流行により、テレワークや、副業・兼業での働き方を希望する従業員が増えるなど、社会的にも多くの会社で従業員の働き方に変化が見られます。

​​ 会社の就業規則は現状の働き方にマッチした規定になっているでしょうか?

​​ また暫く見直しをしなかった結果、気が付かないうちに法令に違反した就業規則になってしまっていることがあるかもしれません。就業規則は是非定期的な見直しを行う事をおすすめします。

労働条件や法改正に対応するための見直しポイント

就業規則を見直す際は現在の労働関係法令への適合性・個々の従業員に適用される労働条件などに着目していく必要があります。

​​ 2024年現在、特に見直しが必要な事項として以下が挙げられます。

残業代等に関する規定

従業員が所定の労働時間を超えてした場合や休日にした場合は、時間外労働として原則残業代を支払う決まりになっています。 従業員が所定労働時間を超えて働いた場合や、休日に働いた場合は、時間外労働として原則残業代を支払う決まりになっています。

​​ その残業代の割増率に関する規定は、労働基準法の水準以上になっているでしょうか?

​​ 特に中小企業においては2023年4月以降、1ヵ月の時間外労働が60時間を超える部分については25%以上から50%以上に引き上げられました。

​​ この変更に伴い、基本的な水準も含め対応できているか確認してみましょう。

テレワークなどに関する規定

コロナ禍により今では多くの企業がテレワークを導入していますが、一時的な対応のつもりで、テレワークに関する規定を就業規則へ盛り込んでいない企業も多くあるようです。

​​ しかし、トラブルが発生した際、規定が無ければ問題が解決できずにこじれてしまい、会社側が不利益を被る可能性も考えられます。

​​テレワークを導入する(している)場合は、就業ルールや通勤手当、通信費や光熱費などに関する規定を新たに設けましょう。

育児・介護休業等に関する規定

近年、育児休業や介護休業に関する法律は改正が多くあります。 最近では2022年に新たに男性の取得を想定した『産後パパ育休』(産後8週間以内であれば最大4週間の育休を2回に分割して取得できる制度)が施行されました。

​​その他、育児休業や介護休業に関する制度は細かなルールなどが多く複雑なため、全体的に見直したほうがよいでしょう。

従業員とのトラブル防止策

従業員とのトラブルが発生した場合、会社のルールブックである就業規則は非常に重要ですが、自社の勤務実態にそぐわない就業規則では、かえって会社が不利益を被る可能性があります。

​​ これまで記載の通り、トラブルを未然に防ぎ、起きてしまった問題に適切に対処するためにも、就業規則は法律や実態に即した内容で作りこむ必要があります。

​​ そのため、就業規則のルールや労働関係法令を把握している社会保険労務士に作成依頼をすることをおすすめします。またリーガルチェックなどを用いて定期的な見直しも忘れずに行いましょう。

トラブルを未然に防ぐ方法を一つご紹介します。

​​ まず懲戒事由について具体的に定めた上で、規定の最後に「その他前各号に準ずる行為があった場合」といった包括規定を設ける方法です。

​​このような定めを行うことで、具体的に明示されていない類似の行為についても懲戒の対象とすることが可能になり、予期せぬトラブルが発生した場合にも柔軟な対応ができるようになります。

予期せぬ問題に対応するための体制整備

予期せぬ労使トラブルは会社経営を行っていく上でつきものです。しかし、しっかり職場のルールを整えることによって、トラブルは減らすことができます。  

​​会社の就業規則が以下のケースに当てはまる場合は就業規則や職場環境を見直す必要があることが考えられます。

  1. ・ニュースや新聞等で法改正を耳にするが、特に就業規則への反映はしていない
  2. ・労働基準監督署から注意や指導を受けたことがある
  3. ・パートやアルバイトがいるが、正社員用の就業規則しか定めていない
  4. ・就業規則に定められている内容と実際の労働環境が乖離している
  5. ・助成金を受けたいが、受給要件の記載がない

​​トラブル防止の観点からも労務関係の専門家である社会保険労務士に一度ご相談下さい。

社労士が就業規則を作る場合のメリット・デメリット

就業規則を社会保険労務士に依頼した際のメリットとしては、以下が挙げられます。

  1. ​・​最新の法改正に適した就業規則になる
  2. ・​自社の働き方や就業状況に適したオーダーメイドの就業規則を作成することができる
  3. ・​就業規則を作成する過程で、会社の現在の就業状況における問題点を把握できる (※社会保険労務士と打合せを重ねていく中で、現在の労務管理が適切か否かを見直す良い機会になる。)  

​​またデメリットとして、費用が発生する事が考えられます。ただし、会社の就業環境改善と費用を天秤にかけた時、このデメリットは一時的なものにすぎないのではないでしょうか。

当事務所では就業規則作成についての無料相談を受付ております。全国対応していますので、まずはお気軽にお問合せください。

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この記事の著者

大内 直子

社労士

大内 直子(おおうち なおこ)プロフィール詳細はこちら

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