養育費とは
養育費とは、子どもの監護や教育のために必要となってくる費用のことです。子どもが自立するまでに必要となってくる費用を意味し、子どもと生活を共にして面倒をみている親は、子どもと生活を共にしないもう一方の親に養育費を請求することができます。
養育費には具体的には以下の内容が含まれます。
- 生活費(食費、住居費、被服代など)
- 教育費(学校の授業料、通学費など)
- 医療費(診察代、薬代)
- 娯楽費
- 通信費(スマートフォン代)や交通費など
養育費の算出方法
養育費の額は、父母の経済力に応じて決まります。家庭裁判所が公表している「養育費算定表」では、父母の年収から具体的な養育費を算定できます。
もっとも、各家庭の事情によって養育費は変動するものですので、この算定表を基礎として、話し合いをしていくことが良いと思われます。
養育費はいつからいつまでもらえるか
養育費について、いつまでもらえるかは法律では規定がありません。養育費は、「未成熟子」のために支払われるのが原則です。
民法改正(令和4年4月1日施行)では、成人年齢が18歳に引き下げられましたので、支払われる期間は成年となる18歳の場合もあります。
しかし、現在では大学に行く子どもも多く、18歳で経済的に自立したとみなして養育費の支払を終了させるのは、子どもを養育する側の親にとって多くの負担を課すものであるという配慮などもあり、合意が成立しない場合には、基本的には20歳までとなるケースもあるようです。
また、大学へ進学する子どもの場合、大学進学を条件に大学卒業まで養育費を支払うとするケースもあります。
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養育費を決める流れ
養育費の決め方の種類
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父母での話し合いの上定める方法
養育費について、まず父母での話し合いで決めるのが一般的です。もし、双方のみでの話し合いによって養育費の額が決まらない場合には、弁護士を介して協議を行うと良いと思われます。
協議の上、養育費の支払いがまとまった場合には、将来支払いが滞る可能性も想定して、公正証書を作成するとよいでしょう。公正証書に「強制執行認諾文言」の記載をしておけば、裁判所を介することなく強制執行が可能となります。
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調停手続を利用する。
父母での協議がまとまらない場合、「養育費請求調停」を申し立てることができます。また、離婚調停の中で、養育費について争うことも可能です。
調停で合意に至ると、調停は成立し、確定判決と同一の効力を持つ調停調書が作成され、父母はこれに拘束されることとなります。
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家庭裁判所での審判
調停が不成立となると、養育費請求調停は、自動的に審判手続へ移行します。
審判では、家庭裁判所が、当事者の提出した資料などをもとに、適切な養育費の金額を決定します。
調停や審判においても、両親双方の収入額と子どもの年齢や人数から「算定表」で算出される額を参照しながら、個別事情も加味して具体的に金額を算定されることが多いです。
養育費を決める際の注意点
話し合いで養育費を決める際には、養育費の支払いがスムーズに行われるよう、下記の事項をより具体的に決めるようにしましょう。
- 養育費の金額
- 支払期間
- 支払時期
- 振込先など
法務省のHP(法務省:「子どもの養育に関する合意書作成の手引きとQ&A」について)には、合意書のひな形がありますので、このひな形に沿うような形で取り決めをしてもよいと思われます。
養育費が払われない場合
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家庭裁判所における履行の確保の手続の利用
家庭裁判所に対して履行の確保の手続きの利用を申し出ると、家庭裁判所が、相手に養育費の分担の取り決めを守るように、説得や勧告をしてくれます。
また、養育費の場合、家庭裁判所に履行命令を申し立てることができ、相手が正当な理由なく履行命令に従わないときは、過料の制裁が科される場合もあります。
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強制執行の手続の利用
履行の確保の手続は、相手の財産を差し押さえるなど、強制的に目的を達成する手段としては使えません。
そこで、公正証書(一定の要件を満たす必要あり)や調停又は審判で決められた場合には、これらを債務名義として、強制執行の手続を利用することができます。
養育費の支払いが滞った場合に用いられる強制執行の方法としては、債権執行が主に使われます。債権執行では、裁判所が債権差押命令を出し、債務者の持っている債権(給料や預貯金など)を差し押さえる手続きです。
債権執行は、債務者(養育費の場合養育しない側の親)の住所地を管轄区域とする地方裁判所に申し出ることが必要です。提出する書類は、各地方裁判所によって異なる場合もあるので、該当する地方裁判所のHPをご確認ください。
弁護士に相談するメリット
- 請求すべき養育費の金額が把握できる
養育費は、基本的に双方の収入を基礎に判断されることが多いです。相手方が「収入」を明らかにしてくれるとは限らないですし、自営業の場合、確定申告書に記載されている額を所得とすべきでないケースもあります。
したがって、当事者のみでは、養育費の適切な額を算定することは難しいといえるでしょう。弁護士に依頼すれば、養育費の基礎とすべき収入を適切に算定してくれるでしょう。
- 相手とのめんどうなやり取りは弁護士に任せることができる
弁護士に依頼すれば、相手とのやりとりは全て弁護士に一任することができます。相手からかかってくる厄介な電話に対応するストレスなど、当事者のみだと手続を進めていく上で避けることのできないストレスを、弁護士に依頼することによって、大幅に軽減させることができます。
養育費がいくらもらえるかどうかは、子どもの未来にもかかってくることなので、弁護士に依頼した方が、安心して慎重に検討できると思われます。
養育費に関するよくある質問
養育費の増額について
一度養育費を決めたが、決めた当時と事情が変わりさらに養育費が必要となった場合、養育費を増額ができないかと悩む方もいらっしゃると思います。調停や審判で争う場合、個別の事情を総合的に考慮して、増額ができるかどうかが決まります。
その中でも、以下の場合には、養育費の増額が認められやすいと言えます。
- 教育費の増額
- 医療費の増額
- 支払義務者の収入の大幅な増加・受取権利者の収入の大幅な減少
養育費の減額について
養育費が増額することができる場合があるのと同様に、減額が認められる場合もあります。支払義務者の収入が減った、受取権利者の収入が増えた、子どもを扶養することができたなどの場合には、減額が認められる場合があります。
離婚後に養育費の請求はできる?
親は、未成年の子どもを扶養する義務があり、両親は経済力に応じて養育費を分担します。仮に離婚時に養育費について取り決めがなかったとしても、離婚後に養育費を請求することは可能です。
なぜなら、離婚後も両親は成人するまで子どもを扶養する義務を負い続けるので、両親は養育費の支払義務が免除されたわけではないからです。ただし、過去の養育費についての請求を認めない裁判例が多いため、なるべく早く養育費の請求をすることをおすすめいたします。
養育費の一括払いしてもらう事はできる?
養育費の一括払いは、父母双方の合意があれば可能です。一括払いにすると、未払いや滞納の心配がなく、関係も断ち切ることが可能です。
もっとも、毎月支払われる場合と比べ、総額が少なくなる場合もあります。月々支払っていく方が支払う側も負担が少ないため、協議や調停が長引く可能性もあります。
再婚しても養育費は払わなければならない?
自分が再婚した場合でも、元配偶者の扶養義務が消えたわけではないので、元配偶者の養育費の支払義務がなくなるわけではありません。しかし、再婚相手と子どもが養子縁組をした場合、再婚相手も子どもの扶養義務を負い、元配偶者は二次的な扶養義務を負うことになります。
したがって、再婚相手に子どもを養育するのに十分な資力がある場合、元配偶者の養育費の支払いが免除・減額される可能性があります。