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弁護士コラム Column

離婚前に別居するメリット・デメリット

2023年06月09日
名古屋丸の内本部事務所  弁護士 岩田 雅男

夫婦が、離婚に至る過程は非常に様々ですが、大きく「別居をしてから離婚をする場合」と「別居をしないまま離婚をする場合」とに分けることができます。 しかしながら、自分が離婚をする場合に、別居をしてから離婚をすべきかどうかは悩ましい点も多いのではないかと思います。

​​ そこで、今回は、まずは、別居をするとはそもそもどういう状態なのかをご説明します。 その上で、別居のメリット・デメリットをお伝えして、どのような事案で別居を経由すべきなのかを説明します。

離婚前に別居をすると法的にはどういう状態になるのか。

別居期間が長ければ法律上の離婚の理由になる

離婚について協議が整わなかった場合には、裁判所において、離婚をするべきかどうかを決めることになります。​​

​​原則は当事者間の話し合いで決まりますが、法律によって、当事者の意思に反して強制的に離婚させるためには、それなりの理由が必要です。

​​具体的には、「婚姻を継続し難い重大な事由」という形で法律に定められていますが、要は「この夫婦はこれからも結婚生活を維持することが難しいくらい関係が破綻している」といった内容です。

​​​​そして、「別居期間が長い」という場合は、この夫婦が破綻をしている重大な指標になります。

​​一般には、別居期間が少なくとも3年程度あれば、「婚姻を継続し難い重大な事由」があるとしてたとえ離婚に同意がなくても離婚が成立すると言われております。

​​このように、別居には、「長ければ離婚の理由になる」という効果があります。

婚姻費用分担請求(生活費)ができるようになる

また、別居をすれば、生活費を請求できるようになります。

​この生活費のことを法的には婚姻費用と言います。夫婦には、お互いの生活の状況を維持する義務があり、別居をしても同じです。同居中は、夫婦で財布が一つであったりするなど、夫婦のお金は混在していることが多いと思います。

​​もっとも、別居をした際は、はっきり財布を分けた上で、生活費を分担しなければなりません。

​​そこで、「収入が多い方は少ない方に」「子どもを育てていない方が育てている方に」婚姻費用を支払うことになります。​​婚姻費用には、「子どもの養育費部分」と、「配偶者の生活費部分」が含まれており、双方の収入をもとに、算出することが可能です。

​​詳細な金額や行使の方法についてはぜひご相談ください。

財産分与の基準時になる

離婚をする場合には、夫婦の共有財産を分け合うことになります。このように離婚に伴って夫婦の共有財産を分け合うことを、財産分与と言います。さらに、財産分与をするためには、「どの時点」での財産を分け合うかという点が問題になります。財産の額・状況は日々変動するので、時点が問題になるわけです。

​​そして、一般に、別居をしてから離婚に至る場合には、「別居時点」が財産分与の基準になります。

​​このように、別居の時点は財産分与の基準時になるという意味があります。

別居するメリット

別居をするメリットは法的な観点からすると、

​​別居のメリットの1点目は、上記に述べた離婚の理由を積み重ねることができるということです。

​​別居のメリットの2点目として、同居中に財布が一緒だった場合には、全く生活費を負担してくれなかった配偶者が、別居をしたうえで法的手続に則って婚姻費用分担請求を行うことで、しっかり払ってくれるようになることもあります。

​​法的な観点とは離れると、別居をする一番のメリットは、配偶者との同居を解消することで精神的な負担が減るということです。別居を考えている以上、相手方との生活が苦痛でいらっしゃる方も多いと思います。

​​別居をすることでそのような精神的負担からは解放されることになります。

別居するデメリット

別居をするデメリットとしては、

​​1点目としては、引越しの準備が大変になってしまうことです。ただでさえ精神的な負担が多い状況で荷物の整理をするのは大変です。

​​また、2点目のデメリットとしては、費用がかかることです。仮に別途部屋を借りるとなると、賃貸の初期費用がかかります。また、家具家電を用意するとなるとその費用もかかります。

別居すべき場合

以上のメリット・デメリットを踏まえると、別居すべき場合とは①同居をしていることが精神的に耐えられない場合、②お子さんへの暴行などお子さんへの危害が加えられる場合等です。新しい生活の準備にかかる金銭的負担については、婚姻費用の請求などで賄うことになります。

とりわけ、過去の私の依頼者の方々の中には、日常の暴言などにより、何が正しいのかが分からなくなってしまった方が多くいらっしゃいます。  

​​友達に相談して、「そんなこと言われるのおかしいよ」などと言われても、狭い家庭の中では、なかなか意見も言えなくなった結果、それが当たり前と思ってしまう方々がいます。  

​​そのような方々の中には、夫婦の当たり前が社会一般の当たり前とかなりずれてしまっている方もいらっしゃいます。

このように、配偶者から精神的に支配されてしまっている場合には、一刻も早く別居を決断されるのがよいと思います。​​

私の依頼者の方々には、

​​「今は逃げるのが精いっぱいで、何ができるのか、何がしたいのか分からないことも多いと思うけれども、離れれば、今後、こんなことがしたい、相手方にお金を請求したいという気持ちになると思いますよ。少しわがままになって私が止めるくらいがちょうどいいので、そうなれるよう一緒に頑張りましょう」

​​とお伝えをしています。

離婚前に別居をする際に準備しておくこと

別居をする際に準備しておくことについては、証拠を保全しておくこと、所在を掴まれないような手続を準備しておくことという2点が重要です。

​​証拠を保全しておく点については、過去にも弊所の別の弁護士が取り上げています。

別居を考えたときに準備する書類

こちらも合わせてご確認いただきたいところですが、簡単にまとめると、①収入に関する資料として源泉徴収や給与明細(直近3か月分程度)、②財産に関する資料として預貯金通帳、自動車に関する資料、保険に関する資料、負債に関する資料等を収集しておく必要があります。

特に預貯金通帳については、把握できるタイミングで、金融機関、支店名程度までは把握しておきたいですし、できれば、口座番号、口座名義まで記録ができるのであれば、記録をしておきたいです。

所在を掴まれないようにする手続については、住民票上の住所を移転させない方法もありうるところですが、住所を変えないことも何かと不便になることもあります。 住民票を変えておいた上で、所在を掴まれないようにすることが必要です。
また、所在を掴まれないようにする手続については、特にDV案件の場合には、とても重要になります。

以前、私自身が、ブログにて取り上げたこともあります。

暴力をふるった配偶者から別居先を追跡されない方法​​

こちらも合わせてご確認いただきたいですが、簡単にまとめると、「住民基本台帳事務におけるDV等支援措置」として、この支援措置を講じれば、住民票の写しの交付や、住民基本台帳の一部の写しの閲覧、戸籍の附票など、住所が分かる資料の閲覧を制限することができます。

これができれば、住民票からの追跡を受けることはできなくなります。

​​そのほか、郵便の方法をどうするのか、通学施設や通院施設などの住所を推測できてしまう施設の情報をどのように隠すのかについては、ぜひ弁護士にご相談ください。

子どもがいる場合の別居

お子さんがいる場合の別居については悩ましい点があります。

​​それは、お子さんを連れて別居をすることが違法な連れ去りにならないのかという点です。

​​別居に同意があり、どちらがお子さんを育てるのかを話し合うことができればよいのですが、やむを得ず同意がないまま、お子さんを連れて別居をする必要がある場合もあります。

このような場合であっても、例えばお子さんが明確に別居をしてくないという意思を示しているにもかかわらず連れて行くこと、幼稚園や小学校への登下校のタイミングで連れて行く方法や、手段として暴行を伴っている連れ去りは違法になりますが、それ以外であれば、よほど問題にはありません。

逆に、既に別居をしているにもかかわらず上記の方法で連れ去りをすることは相手方の連れ去りが違法と評価されてしまうことになります。

弁護士に相談するメリット

弁護士にご相談いただくことで、①事前の準備ができる、②婚姻費用をしっかり払って貰える、③離婚について別居以外の点についても網羅的に質問できるというメリットがあります。  

​​①に関しては、事前に、いつ、どのように別居をするのかをご相談いただくことができます例えば別居のタイミングに合わせて弁護士が介入することを伝える文書を置いておく等の対応をすることができます。  

​​②に関しては、別居には新たな経済的負担が伴うところですが、調停等の法的手続を経ることで、婚姻費用をしっかり払わせることができます。  

​​③に関しては、離婚には別居のみならず色々なことが問題になります。離婚についての様々な問題点をご相談いただき、一つ一つを解決することができます。  

​​別居に関連する点のみではなく、離婚に関わる問題を解決するためにも、ぜひ弁護士にご相談をいただきましたら幸いです。

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